フランスの農業を襲った今年の酷暑
この夏フランスは酷暑と干ばつに見舞われた。冷房が日本ほど普及していないためパニックに陥った人々のエピソードは日本でも報道されたかもしれないが、この気候変動はなにより農業に大きな打撃を与えた。今回は筆者に宛てられた女性農家からのメッセージを紹介したい。エレーヌ・ルグランは、彼女の妹と二人で十数年前からアンジェ近郊で有機農法を営んでいる。彼女の栽培する野菜はシェフたちに高く評価され、星付きレストランなどにも卸している。しかし今年は、彼女がこの仕事に従事するようになってから最悪の年だという。
エレーヌは言う。「フランスの農業全体がどんな苦悩を舐めているか言葉にするすべもありません。酷暑につぐ酷暑で、栽培を諦めなければならない作物があるだけでなく、せっかく育った野菜もその多くが文字通り焼け焦げてしまいます。今週は、2日間の酷暑の後、90パーセントのパプリカが枯れてしまいました。35度を超えると多くの野菜は受粉しても実をつけることができません。40度を軽く超える日々が続いた今となっては、すでに希望が持てない状況です。日中外に出ることが困難な状況では、農作業は早朝か日没後に行うしかなく、作業時間が足りなくなる一方です。わたしには、野菜が悲鳴を上げているように感じます。苦しみ喘いでいるのに、作り手ができることはあまりにも少なく、無力感に襲われます。何ヶ月もの作業が、40度以上の熱風が数時間吹き荒れるだけで、無駄になってしまうことも珍しくはないのです。消費者の人がどれだけこの事態を実感しているのかはわかりませんが、今後、わたしたちの食すべてが気候変動のインパクトを受けずにはいないでしょう。手に入らなくなる食べ物が増え、他のもので我慢したり、あるもので満足せざるをえない、そんな日が近づいているように思います」
彼女の日常は決して例外ではない。南欧はさらに深刻な酷暑に見舞われ、山火事が多発するほど乾燥し、水不足に悩まされているからだ。ここで書かれていることは、農業大国フランスが全国的に直面している状況なのだ。
彼女の農園はそのうえ5月に盗難の被害に遭い、収穫物、種や農機具、特に散水機を盗まれた。日本でも農作物の盗難は残念ながら珍しくないが、ここフランスでも盗難は農業に従事する人々の頭を悩ませる問題の一つだ。このような状況下で野菜が高くなる中、盗難が減ることはないだろう。
気候変動に人間がどのように「s’adapter対応する」べきかは、この夏、政治家たちの答弁でもよく使われた単語だが、そもそも人間は対応できても自然は対応できる限界を超えている、という人々も多い。
この酷暑は今年だけの例外ではなく、おそらくヨーロッパでも毎年の現象になるだろう。今後、わたしたちの食も大きく変わっていくかもしれない、そう感じさせられた季節だった。



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