白水社のwebマガジン

MENU

「猫ちゅみ観察記」長島有里枝

第64回 8月8日の観察

 小太朗くんは今日で4歳になりました。

 人間に換算すると、こっちゃんはいま何歳だろう。今年初めてそんなことを考えた。ネットで調べてみると、猫の4歳はヒトの32歳や35歳だと出てくる。Rより10歳も年上には思えないが、武蔵美で初めての教え子たちはまさに今そのぐらいの年齢で、彼らの顔を思い浮かべてみたらなんとなく腑に落ちた。可愛がった子たちは何歳になっても変わらず可愛い。

 しかし、この「32」は身体的な成長や老化の観点から編み出された数字であり、生まれてまだ4年しか生きていないという本人の経験にはまったく注目していなさそうだ。確かに、4年という時間はその種に固有の寿命を考えたら重みが違うが、1日24時間をほぼ同じリズムで生きているヒトと猫の経験そのものに30年分の差が生じるとはどうしても思えない。だからこっちゃんの心はまだ4歳で、まだまだ赤ちゃんなのだとわたしは思う(し、思いたい)。 

 同じことを何度も書きそうなので、過去の観察記のお誕生日回を振り返ってみた。すると、2歳の誕生日にはケーキを手作りするなど、かなり気合の入ったお祝いをしていることがわかった。でも確か、あの時のケーキはそこまで好評ではなかったはず‥‥。さらに、去年はマグロの柵をスーパーで買ってきたとある‥‥なるほどね。猫飼いとしての修練を日々重ねた結果、こんにちのみゃおわお(ママ)はこちゅみにはなにより鶏ささみが嬉しいということを理解しつつある。まぁ、マグロもいいけどね。

 今年の誕生日は、趣味で続けているバレエの発表会前日の通し稽古と重なってしまった。そのうえ、今年の夏忙しすぎ&年齢的な不調&温暖化由来の気候などを原因とした体調不良が重なり、3日前にぎっくり腰ならぬぎっくり首を発症、舞台に立つことが危ぶまれるほどの状態になってしまった。そんなわけでこっちゃんスペシャル用意できなくてごめーん、マコトにすみma men!(©ジョイマン様)こちゅみ担当大臣としての職務をまっとうするためには、セルフケアおよび働き方改革が何より大事だと、まわしを締め直すみゃおわおもこの日、爆誕しました。

 とにかくこっちゃん、4歳のお誕生日おめでとうございます。台風前日の沖縄で路頭に迷う赤ちゃんだった君が美保ちゃんの保護に応じてくれたこと、ナキさんや近くの猫パイセンにしこたま可愛がられてすくすく育ってくれたこと、そのあとはるばるうちに来て、今日までみゃおわおに飼われているふりをしながら本当はこっそりわたしを生かすために陰で暗躍してくれてること、なによりそのためにはオレが元気でいなくては、と日々わたしに指示を出しつつ自分を大切にしてくれていること全部、あんたサイコーだよ!!

タグ

バックナンバー

著者略歴

  1. 長島有里枝(ながしま・ゆりえ)

    東京都生まれ。1999年、カリフォルニア芸術大学MFA写真専攻修了。2015年、武蔵大学人文科学研究科社会学専攻博士前期課程修了。2001年、『PASTIME PARADISE』(マドラ出版)で木村伊兵衛写真賞受賞。10年、『背中の記憶』(講談社)で講談社エッセイ賞受賞。20年、写真の町東川賞国内作家賞受賞。22年、『「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ』(大福書林)で日本写真協会学芸賞受賞。23年、『去年の今日』で野間文芸新人賞候補。主な個展に「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館、2017年)、著書に『テント日記/「縫うこと、着ること、語ること。」日記』(白水社)、『こんな大人になりました』(集英社)、『Self-Portraits』(Dashwood Books)などがある。

フランス関連情報

雑誌「ふらんす」最新号

ふらんす 2026年9月号

ふらんす 2026年9月号

詳しくはこちら 定期購読のご案内

白水社の新刊

「ふらんす」100年の回想

「ふらんす」100年の回想

詳しくはこちら

白水社の新刊

フラ語入門、わかりやすいにもホドがある![決定版](音声DL付)

フラ語入門、わかりやすいにもホドがある![決定版](音声DL付)

詳しくはこちら

ランキング

閉じる