第47回 11月20日の観察
ここ数日で東京もすっかり冬の寒さとなり、慌てて押入れの奥から暖房器具を引っ張り出して過ごしている。ハナちゃんのムーブは相変わらずだが、小太朗はわかりやすく立ち位置をよりあたたかい場所へと移動させている。エアコンの温風がじかに当たるポジションにじっと座っていることが多いので、肌も粘膜も乾燥しきっちゃうんじゃないかと気が気ではない。ずざざざざっ!の絨毯の下にはホットカーペットが仕込んであるので電源を入れてやるが、いつもの絨毯が暖かくなるとはよもや思わないらしく、なかなか気づいてもらえない。いまだって絨毯の隅に置いたRの子供用布団の上に丸くなって寝て、おそらくカーペットの暖かさは届いていない。
昨日は植木屋さんが来て、夏に生い茂りいっせいに枯れ始めた庭草の刈り取りと、今年もたくさん実がついた柿と小柚子の収穫&剪定をしてくれた。今年は柿が豊作で、庭には例年より多く、さまざまな種類の鳥が来ている。職人のKさんもあまりのすずなり具合に驚いている。
麻袋3つに入った柿を地面に並べ、食べられそうなものとそうでないものとを選り分けてふきんできれいに拭いていくと、ゆうに100個はありそうだった。掃き出し窓の内側からにゃあ、とこちゅみがわたしを呼ぶ。家の中にいる彼をガラス越しに眺めるのはなんだか妙な気分だった。口角を上げて牙をむく鳴きかたはいつもと同じはずなのに、なんだか不安げに見える。お母さんは仕事中だよ、などと話しかけていると、猫って可愛いんですねとKさんが言うので、うん、可愛いですよ、飼ったらどうですか、とすかさず猫キャンを張っていく。
庭に人がいて、木がどんどんスッキリしていくさまを、こっちゃんがじっと見守っている。あれだけ収穫しても、樹上にはまだ20個以上の実が残っている。どうしますか、全部取りますか。そう聞かれたので迷ったが、それらは鳥に残しておくことにした。本格的に寒くなるまえにお腹いっぱい食べに来てくれたら、こっちゃんのキャットTV*もさぞかし充実の内容になることだろう。
*著者が勝手に猫師匠と慕うジャクソン・ギャラクシー氏による造語。家猫にとって窓はヒトのテレビと同等だという意味で、窓外の眺めを指す。



