第23回 11月24日の観察
このところ外出や出張が続いたせいか、こっちゃんの態度が気になる。我が家のアイドルからの寵愛を一身に受けているという自負がわたしにはあり、それはまた周知の事実として家族に共有されてもいた。ところが先週、ベッドに潜りこんできたこにゅみは、あろうことかGに体をピッタリ寄せて寝る体制に入った。
腕に顎をちょこんと乗せて寝るこちゅみの体温が、じんわり腹を温めるさまを想像していたのになんという肩透かし! 彼を迎え入れるべく持ち上げた掛け布団を下ろしてもなお、わたしの周りにだけ微妙な隙間が空いている。あるべきものがない喪失感と、シーツの上の寒々しい空間に感情が揺さぶられる。寝ぼけたまま、暖かい鞠玉みたいなこちゅみを当たり前に享受するGが羨ましい、と同時にとんでもなく憎らしいと思う。彼らが裏切り者のように感じられ、すっかり目が冴えてしまった。どうしても納得できず、手探りでもふもふを探り当てて背骨の上を撫でる。それきっかけで、いけね、相手を間違えました、とこにゅみがこっちに来ることをうっすら期待していたが、そうはならなかった。なんだよ、もうっ! 不貞腐れて二人に背を向け、そのまま眠ってしまう。目が覚めると、自分がナンバー2に格下げされたかもしれない不安が、再び蘇ってきて悲しくなった。
その気持ちは、子育てになぞらえることができた。母を慕う子の愛の上に、あぐらをかくことがなかったわけじゃない。こにゅみに対しても、そんな驕りがあったのではなかったか。「母の愛」なんて所詮、自分に都合の良い言説だもの。子が母に寄せる愛の方がずっと強くて切実だとわかっていたはずなのに、こっちゃんごめん! それから、子が親をもはや必要としていないと気づいた日の、嬉しくも哀しい気持ちを思い出す。こっちゃん、大きくなったんだね……。
階下で、すでに朝食を済ませてストーブ箱の上に寝ているこっちゃんに顔をすり寄せようとすると、さっとかわされた。横からGが割り込んできて、顎髭でこにゅみのおでこを撫でると今度は気持ちよさそうに喉を鳴らしている。こっちゃん、わたしのこと嫌いなんだ……。落ち込んでそう言うと、あんたそれは顔につけた化粧品の匂いのせいやで、とGが呆れ気味に答える。本当にそうだろうか。確かめたくてこにゅみをじっとり眺めても、触らぬ神に祟りなしとでもいうように、そっぽを向いている。