第26回 1月9日の観察
さぁ、ウールの白い毛布の上で丸くなったちゃつみ(小太朗)、パソコンに向かうミャオワオの目の前で半目のまままどろんでいる・・・おおっと、庭の柿の木に来たムクドリの声に反応し、一瞬ロックオン状態になった! これで目を覚ますかと思いきや、今度はしっかりと目を瞑って本気で寝はじめたぁ、まさに図太さ最強伝説の復活でありましょう・・・と、プロレス実況みたいに頭の中で喋ってしまう、3:30pm。カーテン全開の窓から見える外は快晴、2階の寝室には平和な時間が流れている。
こっちゃんの脇腹のもふもふの毛が、呼吸に合わせていつもよりゆっくり上下する。嫌なことがあると顔の前方向にぴんっ!と集まる白いお髭はいま、閉じた傘のようにコンパクトにまとまって、顎下のラインに沿ってしまわれている。なにか夢を見ているのか、さっきより鼻息が荒くなる。起きたかな、と顔を覗き込むとばちん!と目が合った。一瞬ひやりとするが、右の掌をパーに開いて小さく伸びをすると、その腕に顎を乗せてまた眠ってしまった。
わたしは床にぺたんと座り、ベッドの隅にノートパソコンを乗せて仕事をしている。すごい体勢、でも、ホッとしてる。ここ数日、「ぐずり」モードだったこちゅみを持て余し気味で精神的にキツかった。きっかけは鶏胸肉(a.k.a.小太朗の大好物)を料理に使ったことにある。欲しがるこちゅみにそれを、なにかのインセンティブとしてではなく与えた結果、もっと出せよ!と恫喝される羽目になった。猫ちゃんって、欲しいものを諦めない。手にいれるまで、根性で鳴き続けるところはマジですごい。ダイニングテーブルで仕事をするわたしは、我が家で最も冷蔵庫に近い存在。こちゅみに狙われるのは必然だ。
小太朗をなだめるのに時間を奪われ、原稿の進みがいっそう悪い。もう、菜食主義者になるしか手だてはないのだろうか。そう思い詰めたわたしに、Gが二階に行くことを勧めてくれたので、試しにやってみている(ていうか、元はわたしが編み出した手法)。効果はてきめん、出会って以来ずっと、わたしの側近ごっこにハマっているこちゅみは案の定、2階にいるわたしの傍で大人しく窓外を眺めたり、仕事を手伝うフリして居眠りしたりと忙しく、胸肉のカツアゲを忘れている。
ヴェジタリアンにはならなくて良さそうだが、さて、これからどうしたものか。