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「猫ちゅみ観察記」長島有里枝

第54回 3月17日の観察

 猫先輩のMちゃんが朝イチでくれたメッセージに「女王様のような1日を過ごしてね♡」とあったから、今日は好きに過ごさせてもらうねとRに、それからたまたまそこにいたこちゅみに伝えてみた。バイト帰りにケーキを買ってくるというRに対し、アイランドテーブルに鎮座して「おやつ略奪作戦」中のちゅみ様は「はにゃ?」という顔だ。

 母と弟からもLINEメッセージが届いていた。夜、ごはん食べに行こうか、でも忙しいか!と一人ボケツッコミで完結する母の言葉に、改めて自分は外食がそれほど好きじゃないなと思う。誰かと約束をしてどこかへ行くというムーブが全般的に苦手だ。なのに、これまでの人生でどれだけ、気乗りしないイベントに「約束だから」と出かけてきたことだろう。普通はそうするんだろうとか、この機会は逃すべきじゃないのでは、という消極的な理由で自分に負荷をかけた時期もあるが、若かったな‥‥(高校生〜20代)。これからはできる限り家にいたいと思うが、それは小太朗がいるからでもある。

 今日は仕事もしないぞ!と意気込んでみたが大人なのでそんなわけにもいかず、メールでの業務連絡や経理関係の雑事をちょっとだけした。なにかひとつ記念にやりたいこともしようと思い、クローゼットの掃除にも着手した。ベッドルームに行くと、こちゅみがピンクの毛布の上で丸くなっていた。先週、固い毛玉を吐いたので慌ててブラッシングをしたら、空中に舞うほどごっそり毛が抜けた。いつからか、猫の寝る位置や抜け毛の量で春を感じるようになっている。

 お祝いムードで気が大きくなり、オハナの見守り隊長を務めるちゅみ太郎にも何かプレゼントをと、佐賀の無農薬またたびを注文したのだがまだ届かない。夜中、描きかけのこちゅみの絵の続きをやりたくなって、誕生日だしいいや(すでに18日になっていた)と遅くまで絵を描いた。すまして座っているこちゅみの目を描くのが難しくて、消しては描き直す。あとは猫の動きをいろいろ研究しながら描いてみている。4月の終わりから5月にかけて6日間、京都のSodaギャラリーで展示販売する予定だ。猫の絵は、うまく描けると手放しづらくなるので困る。

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著者略歴

  1. 長島有里枝(ながしま・ゆりえ)

    東京都生まれ。1999年、カリフォルニア芸術大学MFA写真専攻修了。2015年、武蔵大学人文科学研究科社会学専攻博士前期課程修了。2001年、『PASTIME PARADISE』(マドラ出版)で木村伊兵衛写真賞受賞。10年、『背中の記憶』(講談社)で講談社エッセイ賞受賞。20年、写真の町東川賞国内作家賞受賞。22年、『「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ』(大福書林)で日本写真協会学芸賞受賞。23年、『去年の今日』で野間文芸新人賞候補。主な個展に「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館、2017年)、著書に『テント日記/「縫うこと、着ること、語ること。」日記』(白水社)、『こんな大人になりました』(集英社)、『Self-Portraits』(Dashwood Books)などがある。

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