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書評

【書評】ブルドー『ボージャングルを待ちながら』 [評者]新島進

オリヴィエ・ブルドー 著 金子ゆき子 訳
『ボージャングルを待ちながら』
集英社 1700 円+税


[評者]新島進

ボージャングルとボーマンソンジュ


 本誌連載「原書レクチュール」で昨年とりあげた作品が早くも翻訳されました。フランスで2016 年1 月に刊行されるや大ベストセラーとなった話題の一冊です。作者ブルドーは1980 年生まれの新人。ボルドーにある小さな出版社に持ちこまれた小説がベストセラーとなり、舞台化、映画化、そして世界各国で翻訳される──そんな出版界の夢をかなえた作品でもあります。

 舞台はパリとスペインの村、ちょっと常軌を逸したある親子の日々が綴られていきます。語り手は小学生で、破天荒な生活を送っている両親を観察し、人生を学習中。パパはある事業で大儲けしたあと、仕事をきっぱりとやめ、今は小説を書いている人物、なによりホラ話が得意です。そしてママン。一般的な社会規範とはズレた感性の持ち主であり、彼女がひき起こすドタバタが前半の読みどころとなります。家でツルを飼ったり、子どもを学校に行かせるのをやめさせたりと自由奔放です。

 そんな両親が愛してやまないのがカクテルパーティと、有名なナンバー「ボージャングルを待ちながら」の伴奏に合わせて舞うダンス。老いたダンサーをモチーフにした哀愁漂う曲で、複数の有名歌手がカヴァーしていますが、二人のお気に入りはアメリカのジャズ歌手ニーナ・シモンのヴァージョンです。

 しかしママンの脱線具合は、彼女が抱えている心の病の兆候でした。病はやがて本格化して入院することに。ここで明らかになるのが、それまでの親子のぶっ飛んだ暮らしぶりが、ママンの精神を保つためにパパがつくりあげたもの、その愛情の結果であったということです。まさに狂気の愛。毎夜のパーティ、ボージャングルに合わせて高く飛ぶこと、それはママンが堅苦しい現実で生きていくために必要なものでした。そしてなにより、パパがつく「美しいウソ(ボーマンソンジュ)」も。そのウソはまた、小説を書くという行為を二重化しているでしょう。

 抜群の読みやすさで、これはベストセラーになるべくしてなった作品と思え、映画版の公開によってまだまだ話題を集めそうです。なお今秋、著者が来日し、各地で講演、日本人作家との対談も予定されています。鮮烈なデビューを経、今後、アメリー・ノートンやマルク・レヴィのような人気作家になるのか。2 作目での展開も楽しみです。
(にいじま・すすむ)

◇初出=『ふらんす』2017年11月号

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