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書評

【書評】えもじょわ『パリ在住の料理人が教える もらって嬉しいチョコレートレシピ』 [評者]明石伸子

えもじょわ 著
『パリ在住の料理人が教える もらって嬉しいチョコレートレシピ』
KADOKAWA
1300円+税

[評者]明石伸子

現代カルチャーとしてのフランス料理

 今年もバレンタインがやってくる。『もらって嬉しいチョコレートレシピ』は、センスあふれる素敵なチョコレート菓子が満載された、この季節にぴったりな一冊である。だが、これは単なるレシピ本ではない。パリ在住の料理人えもじょわ氏が創造した立体的な活動の世界への扉なのである。

 えもじょわ氏はいわゆるスーパー・ユーチューバーだ。フランスを中心とする料理またはスイーツのレシピ動画をYoutubeやニコニコ動画などへすでに約150本ほどアップし、その再生総回数はなんと8000万回に達している。なぜそのように多くのネットユーザーが彼のレシピ動画を再生するのか? それは美しいからである。

 えもじょわ氏は自らのレシピ動画の中で何も語らない。視聴者はその手さばきを見つめ、しじまのなかに響くシャカシャカ、サクサク、パチッパチッなどの作業音によって魅惑されていく。

 できあがる料理やスイーツはどれも大変においしそうだ。しかし、見る者たちが最も心を打たれるのは、えもじょわ氏の審美学ではないだろうか。撮影はすべて自分自身で行っている。えもじょわ氏にかかるとアングル自体がデザインだ。調理道具や背景やカトラリーなどもすべて本人が選んでいるものだ。デザイン、色使い、妥協のない美しさの追求に注がれるエネルギーがひしひしと伝わってくる。

 えもじょわとはemotion(感動)とjoie(喜び)に由来するペンネームとのことだ。たとえば「えもじょわ+抹茶のマカロン」で検索して、ぜひレシピ動画を再生してもらいたい。調理をファッションへと押し上げた人物、それがえもじょわ氏なのだとわかってもらえることだろう。

 著書には他に『パリ在住の料理人が教える フライパンでできる本格フレンチレシピ』『パリ在住の料理人が教える 作りおきできるフランスのお惣菜』などがあり、書籍のなかに含まれる写真もすべて自ら撮影している。調理法は細かく説明され、とても分かりやすい。

 1980年生まれ、調理師学校を卒業したあと、2014年に渡仏し、フランス料理店で修行を積まれた。あらゆる活動をまとめるのがブログEMOJOIE CUISINE(https://emojoiecuisine.hatenablog.com/)だろう。書籍、動画、ブログ、SNS という立体的な活動で躍進を続ける、現代カルチャーの化身のようなえもじょわ氏に、フランス料理と出会えてもらえ、うれしい気持ちでいっぱいである。

(あかし・のぶこ/早稲田大学などでフランス語非常勤講師。Café & Bar à vins Atypique オーナー)

◇初出=『ふらんす』2020年2月号

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