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【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第34回 ワイントラウプの名言

"According to the equation, the policy succeeds in supressing inflation only through sitting on the money wage. It is this recognition that constitutes the theoretical base for an incomes policy which would work to stabilize the price level without the toll in lost outuput and unemployment."
Sidney Weintraub(1972)

 シドニー・ワイントラウプは、WCM(Wage-Cost Mark-Up)理論なるものを提唱した、アメリカのポスト・ケインジアンである。国民所得をY、物価水準をP、実質産出量をQ、単位労働費用w/A(A=Q/N=平均生産性)に対する平均マークアップをkとおく(wは平均貨幣賃金、Nは雇用量)と、P=(kwN)/Q=k(w/A)となる。ということは、もしkが安定的ならば、インフレの原因は、生産性上昇率を超える貨幣賃金上昇率にあることになる。

 「この方程式によれば、所得政策がインフレ抑制に成功するのは、貨幣賃金を抑えることを通じてのみだということだ。この認識こそまさに所得政策の理論的基礎を構成するものであり、それが産出量と失業の代償を払わずして価格水準を安定化さるように作用するだろう。」

 ワイントラウプは、生産性上昇率内に貨幣賃金上昇率を抑えた企業には減税、逆に抑えられなかった企業には増税という「アメとムチ」を追加することも考えた。TIP(Tax-based Incomes Policy)の提案である。

Sidney Weintraub," Incomes Policy: Completing the Stabilization Triangle," Journal of Economic Issues, vol.6,no.4(December 1972),p.117.

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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