第34回 ワイントラウプの名言
"According to the equation, the policy succeeds in supressing inflation only through sitting on the money wage. It is this recognition that constitutes the theoretical base for an incomes policy which would work to stabilize the price level without the toll in lost outuput and unemployment."
Sidney Weintraub(1972)
シドニー・ワイントラウプは、WCM(Wage-Cost Mark-Up)理論なるものを提唱した、アメリカのポスト・ケインジアンである。国民所得をY、物価水準をP、実質産出量をQ、単位労働費用w/A(A=Q/N=平均生産性)に対する平均マークアップをkとおく(wは平均貨幣賃金、Nは雇用量)と、P=(kwN)/Q=k(w/A)となる。ということは、もしkが安定的ならば、インフレの原因は、生産性上昇率を超える貨幣賃金上昇率にあることになる。
「この方程式によれば、所得政策がインフレ抑制に成功するのは、貨幣賃金を抑えることを通じてのみだということだ。この認識こそまさに所得政策の理論的基礎を構成するものであり、それが産出量と失業の代償を払わずして価格水準を安定化さるように作用するだろう。」
ワイントラウプは、生産性上昇率内に貨幣賃金上昇率を抑えた企業には減税、逆に抑えられなかった企業には増税という「アメとムチ」を追加することも考えた。TIP(Tax-based Incomes Policy)の提案である。
Sidney Weintraub," Incomes Policy: Completing the Stabilization Triangle," Journal of Economic Issues, vol.6,no.4(December 1972),p.117.