白水社のwebマガジン

MENU

【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第4回 アーサー・セシル・ピグーの名言

"The complicated analyses which economists endeavour to carry through are not mere gymnastic. They are instruments for the bettering of human life." 
Arthur Cecil Pigou(1928)

 アーサー・セシル・ピグーは、1908年、マーシャルの講座を継いで、ケンブリッジ大学経済学教授に就任した。30歳そこそこの「若造」が教授に指名されたことに憤慨し、経済学の講師陣のなかにはケンブリッジを去った人もいたが、マーシャルの期待に違わず、ピグーはのちに『厚生経済学』(初版は1920年)という名著を著し、経済学の歴史に名前を刻むことになった。

 「経済学者が遂行しようと努力している複雑な分析は、単なる知的訓練ではない。それは、人間の生活を改善するための道具なのだ。」

 マーシャルとピグーでは、細部をみれば、経済分析の方法に違いもあるが、どちらも経済学を「果実をもたらす」学問とみなしていた点では共通している。このような実践性の重視は、ケンブリッジ学派の特徴といってもよい。
 ピグーも、いまでは、「環境税」とか「ピグー税」と呼ばれるような、外部不経済に対する是正策の提唱者として知られているが、もちろん、それを提唱したのが彼の『厚生経済学』である。環境経済学のパイオニアと言ってもよい。

Arthur Cecil Pigou, The Economics of Welfare, preface to the third edition,1928.

タグ

バックナンバー

著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

フランス関連情報

雑誌「ふらんす」最新号

ふらんす 2024年5月号

ふらんす 2024年5月号

詳しくはこちら 定期購読のご案内

ランキング

閉じる