第4回 アーサー・セシル・ピグーの名言
"The complicated analyses which economists endeavour to carry through are not mere gymnastic. They are instruments for the bettering of human life."
Arthur Cecil Pigou(1928)
アーサー・セシル・ピグーは、1908年、マーシャルの講座を継いで、ケンブリッジ大学経済学教授に就任した。30歳そこそこの「若造」が教授に指名されたことに憤慨し、経済学の講師陣のなかにはケンブリッジを去った人もいたが、マーシャルの期待に違わず、ピグーはのちに『厚生経済学』(初版は1920年)という名著を著し、経済学の歴史に名前を刻むことになった。
「経済学者が遂行しようと努力している複雑な分析は、単なる知的訓練ではない。それは、人間の生活を改善するための道具なのだ。」
マーシャルとピグーでは、細部をみれば、経済分析の方法に違いもあるが、どちらも経済学を「果実をもたらす」学問とみなしていた点では共通している。このような実践性の重視は、ケンブリッジ学派の特徴といってもよい。
ピグーも、いまでは、「環境税」とか「ピグー税」と呼ばれるような、外部不経済に対する是正策の提唱者として知られているが、もちろん、それを提唱したのが彼の『厚生経済学』である。環境経済学のパイオニアと言ってもよい。
Arthur Cecil Pigou, The Economics of Welfare, preface to the third edition,1928.