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【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第3回 ソースタイン・ヴェブレンの名言

"Conspicuous consumption of valuable goods is a means of reputability to the gentleman of leisure.
"
Thorstein Veblen(1899)



 ソースタイン・ヴェブレンを単に「経済学者」と呼ぶのは誤解を招きやすいかもしれない。私が彼の名前を初めて知ったのは、ガルブレイスの『不確実性の時代』都留重人監訳(TBSブリタニカ、1978年)を読んだときである。ヴェブレンこそアメリカ制度学派の創設者であり、ガルブレイスは自らも彼の系譜に連なっていることを誇りにしていたのだ。



 「価値のある財の顕示的消費は、有閑紳士が名声を獲得するための手段である。」



 「有閑階級」が豪奢な消費に耽って自らの富を見せびらかし、経済的にも社会的にも恵まれない他の人々との差異化を図るという考え方は、それほど新奇なものとは思えないかもしれないが、現代経済学の教科書で最初に習う「合理的経済人」(限られた予算内で財の消費から得られる効用を最大化する)とはずいぶん違う人間だ。ヴェブレンは、このような「顕示的消費」の例を未開社会にまで辿って語り出すのだから、ふつうの経済学者ではない。真の意味で「異端」の人である。



Thorstein Veblen, The Theory of the Leisure Class: A Economic Study in the Evolution of Institutions,1899. 

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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