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【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第24回 ハイマン・P・ミンスキーの名言

"But in truth neither the boom, nor the debt deflation, nor the stagnation, and certainly not a recovery or full-employment growth can continue indefinitely. Each state nurtures forces that lead to its own destruction."
Hyman P. Minsky(1975)

 ハイマン・P・ミンスキーは、「金融不安定性仮説」で有名なアメリカのポスト・ケインジアン。何度か金融危機の可能性を警告してきたが、リーマンショックの最中、一躍注目され、「ミンスキー・モーメント」という言葉が一流経済紙にも登場するようになった。だが、彼の経済理論が本当の意味で受け容れられたのか、疑問も多い。主流派のマクロ経済学はその後何も変わらなかったのだから。

 「しかし、実のところ、ブームも、債務デフレも、経済停滞も、そして確かに景気回復や完全雇用成長も無限には続くことはできない。それぞれの状況は、それ自身の破壊につながる力を育むのである。」

 ミンスキーは、独自のケインズ解釈から「金融不安定性仮説」にたどり着いた。とくに、好況から不況への景気の波が、金融ポジションの移行(ヘッジ金融→投機的金融→ポンツィ金融)と相まって生じ、ついには「ミンスキー・モーメント」という金融危機の瞬間が訪れることを論証した功績は大きい。これほど優れたポスト・ケインジアンの人気が長いあいだ盛り上がらなかったのは不思議だ。

Hyman P. Minsky, John Maynard Keynes,1975,p.126.

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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