第2回 アルフレッド・マーシャルの名言
"The main concern of economics is thus with human beings who are impelled, for good and evil, to change and progress."
Alfred Marshall(1920)
アルフレッド・マーシャルは、イギリスにおける新古典派経済学を体系化し、ケインズ革命に至るまで影響力を保ち続けた名著『経済学原理』(初版1890年、第8版1920年)を著した。ケンブリッジ大学教授として、ピグー、ケインズ、ロバートソンなどのきわめて有能な経済学者を育成した。「ケンブリッジ学派」とも呼ばれる。
マーシャルのイメージは、現在でも、「需要と供給の均衡」の図(「マーシャリアン・クロス」と呼ばれた)によって形成されている。確かに、需要と供給の均衡理論は、マーシャルの新古典派の核心であり、すべての学生がこの図から経済学を学んだといっても過言ではない。だが、マーシャル自身は、需給均衡理論は経済学の基礎ではあっても、その先にはまだ経済の「進化」(ダーウィンの進化論の影響を受けて、evolutionという言葉が多用された)を取り扱う「経済生物学」があるのだと主張していた。上の文章も、それを端的に表現したものである。
「それゆえ、経済学の主な関心は、良かれ悪しかれ、変化と進歩に駆り立てられる人間にあるのである。」
Alfred Marshall,Principles of Economics,8th edition, 1920, preface to the 8th edition.