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【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第9回 ポール・A・サムエルソンの名言

"The existence of analogies between central features of various theories implies the existence of a general theory which underlies the particular theories and unifies them with respect to those central features." 
Paul A. Samuelson(1947)

 ポール・A・サムエルソンは、シカゴ大学の学部生のとき、すでに「神童」と呼ばれており、進学したハーヴァード大学の大学院でも指導教授のシュンペーターによって「天才」と評せられた。彼にまつわる逸話の多くは、都留重人その他が書いているので、ここでは触れない。博士論文『経済分析の基礎』(1947年)によって新古典派経済学の理論構造を高度な数学を駆使して明らかにし、全世界で読み継がれた教科書『経済学ーー入門的分析』(初版は1948年)によって新古典派とケインズ理論を統合した「新古典派総合」を普及させた功績を挙げれば十分だろう。

 「さまざまな理論の中心的な特徴のあいだに類似性が存在していることは、一つの一般理論が存在することを暗示している。なぜなら、その一般理論が特定の理論の根底にあり、あの中心的な特徴に関して特定の理論を統合しているからである。」

 上の英文は、さまざまな理論のあいだの「形式上の類似性」を基礎づけようという宣言だが、それは一言でいえば「最適化原理」のことである。これが現代経済学の基礎であることを疑う人はいない。彼の数学的才能をもってすれば、この仕事はたやすかったというべきかもしれない。20世紀後半を代表する天才経済学者であった。

Paul A. Samuelson, Foundations of Economic Analysis,1947,p.3.

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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