第13回 ミハウ・カレツキの名言(2)
"It is indeed paradoxical that, while the apologists of capitalism usually consider the 'price mechanism' to be the great advantage of the capitalist system, price flexibility proves to be a characteristic feature of the socialist economy."
Michal Kalecki(1954)
現代経済学の教科書をひもとくと、「価格メカニズム」が資本主義の特徴であり、それを欠いた社会主義が効率面で資本主義に敗北したのは必然であるというような記述をよく見かける。ところが、資本主義は、すでに自由競争の時代ではなく、独占や寡占ががあちこちに見られるのがふつうであった。つまり、価格が需要と供給の関係で決まるのではなく、寡占企業が「フルコスト」的な価格決定(生産費に基づいた価格決定)をしているのが経済の大部分を占めていた。そこにはある程度の「価格粘着性」が見られるので、「価格伸縮性」を理由に資本主義の利点を説く人たちの主張は的外れだというわけだ。
「実に逆説的なことだが、資本主義を擁護する人たちは、ふつう「価格メカニズム」が資本主義体制の大きな強みであると見なしているけれども、価格伸縮性は社会主義経済の典型的な特徴であるということがわかるのだ。」
本来は、社会主義経済こそ「価格伸縮性」の利点を活用しなければならないのだが、実際にそうなったかはまた別問題である。
Michal Kalecki, Theory of Economic Dynamics,1954,p.63.