第17回 ライオネル・ロビンズの名言(1)
"Economics is the science which studies human behavior as a relationship between ends and scare means which have alternative uses."
Lionel Robbins(1935)
あまりにも有名な経済学の希少性定義。ライオネル・ロビンズは、社会主義運動から足を洗ったあと、LSEで経済学を学び直し、のちにはLSEの大物教授へとなっていく。彼は、社会主義運動に身を投じていた頃、その指導者たちが社会経済の根本的事実ーー平たく言えば、欲望を満たすための手段は希少であり、これをとればあれを諦めなければならないことーーを全く無視していることに失望してしまった。その経験と、LSEで学んだヨーロッパ大陸の経済学(初期にはとくにオーストリア学派のミーゼスに傾斜していた)の研究の成果が、『経済学の本質と意義』(初版は1932年)である。
「経済学は人間行動を研究する学問である。その際、人間行動を、諸目的と代替的用途をもつ希少な諸手段のあいだの関係として捉える。」
この希少性定義は、現代経済学のほとんどの教科書に採り入れられているが、意外にも、ケンブリッジでは不評であった。ケインズなどは、大不況の最中、生産手段は需要不足で遊休しており、どこに「希少な手段」があるのかと疑問を呈した。実は、若い頃のロビンズは、ケンブリッジ学派に異常なる対抗心を抱き、何度か彼らに論争を仕掛けた。上首尾ではなかったが、後には和解している。
Lionel Robbins, An Essay on the Nature and Significance of Economic Science, second edition,1935,p.16.