第11回 ケネス・E・ボールディングの名言
"We are, I believe, on the threshold of a new attempt at integration in the social sciences, perhaps even in general science."
Kenneth E. Boulding(1950)
社会学者の清水幾太郎の知遇を得ながら後悔していることがある。それは、清水氏が数冊翻訳も手がけているケネス・E・ボールディングについての話を聞かなかったことだ。だが、諸科学の総合を目指した彼の一般システム論は、やはり専門の社会学以外の各分野にも精通していた清水氏の関心をひくものがあったのだろう。
第二次世界大戦後まもなく出版された『経済学の再建』には、まだ後年の一般システム論や「宇宙船地球号」などの話は出てこない。だが、すでにこの頃から、経済学という個別科学の限界を感じていたことが序文からうかがえる。
「私たちは、社会科学、おそらくは一般科学においてさえ、新たな統合を試みる入り口にいるのだ、と私は信じている。」
私は、大学院生の頃までは、一生懸命、経済思想史の各分野での研究を吸収することに専念していたので、世界を「物質圏」「生物圏」「社会圏」に分けて、その構成と進化を統一的把握しようという後年のボールディングの「大風呂敷」についていけなかったのかもしれない。もっと勉強しておくべきだったか。
Kenneth E. Boulding, A Reconstruction of Economics, 1950, p.vii.