第6回 デニス・H・ロバートソンの名言
"Out of the welter of industrial dislocation the great permanent riches of the future are generated."
Dennis H. Robertson(1915)
デニス・H・ロバートソンは、ケインズの初期の教え子の一人で、二人は途中まで親密な関係にあった。ケインズ革命を境に二人の学問的交流は途絶えていったが、ロバートソンが有能な経済学者で、かつ文学的才能にもひときわ恵まれていたことは間違いない。『産業変動の研究』も、彼の20代の傑作である。
「産業的混乱のうねりの中から、将来の偉大かつ永続的な富が生み出されるのである。」
ロバートソンの『産業変動の研究』は、産業変動の原因を実物的要因(イノベーションや収穫の変動など)に求めていたので、現代のリアル・ビジネス・サイクル(実物的景気循環)の理論家のなかには自分たちのアイデアの先駆者だと思っている人がいるようである。確かに、産業変動をもたらす真の原因が実物的なものだというのは同じだが、ロバートソンは、のちにその貨幣的波及を追究した名著『銀行政策と価格水準』(1926年)を著した。それ以後、今度は、貨幣論の専門家として知られるようになったが、両方を読んだ者でなければ真の像は掴めない。
Dennis H. Robertson, A Study of Industrial Fluctuation, 1915, p.254.