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【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第31回 ケインズの名言

"I express this by saying that an accession of new evidence increases the weight of an arugument. New evidence will sometimes decrease the probability of an arugument, but it will always increase its 'weight'."
John Maynard Keynes(1921)

 20世紀最大の経済学者、ジョン・メイナード・ケインズの20代は、確率論研究に捧げられたといっても過言ではない。ある命題hからある命題aを導くことを「推論」a/hと呼び、確率をこの推論における論理的関係P(a/h)と定義した。だが、この推論にさらに「重み」V(a/h)があるというのがさらにユニークである。

 「私はこのことを次のように表現する。新しい証拠の獲得は、推論の重みを増大させる、と。新しい証拠は、ときに推論の確率を減少させるだろうが、つねにその「重み」を増大させるだろう。」

 ケインズの意味で「確率」(「蓋然性」と訳す人もいる)は、必ずしも一つの大きさをもつとは限らず、一定の大きさの順に配列することさえできないかもしれないものだが、新しい証拠を得て、推論の「重み」が増しても、その「確率」が小さくなる可能性さえある。だが、「重み」だけはつねに増えている。「重み」の増大は確率の「信頼度」にかかわるので、たとえ確率が小さくなる場合でも、その信頼度は高いということになる。「不確実性」とは、前提となる命題に含まれる情報量が少なすぎて、「重み」がない状況(例えば、投資決定の場合を考えてみるとよい)のことであり、必ずしも確率が小さい場合と同じではない。これを押さえておかないと、『一般理論』を真の意味では理解はできない。

John Maynard Keynes, A Treatise on Probability,1921,p.78.

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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