第10回 アマルティア・センの名言
"The purely economic man is indeed close to being a social moron. Economic theory has been much preoccupied with this rational fool decked in the glory of his one all-purpose preference ordering."
Amartya Sen(1977)
インド出身でベンガル飢饉の経験から経済学を志したアマルティア・センは、社会選択論の研究から出発し、のちに独自の「福祉の経済学」を構築した功績によってノーベル経済学賞を受賞した。センは、いまや、経済学、哲学、倫理学にまたがる仕事を背景に、学界や論壇で活発な活動を続けている大物である。
「純粋な経済人は、実際、社会的愚者に近いところにいる。経済理論がこれまであれほど夢中になってきた、この合理的愚か者は、彼の単一で万能な選好順序という壮観で着飾っているのである。」
人間は、他人が虐げられているのを見たとき、自分の効用には何の関係もなくとも、虐待は不正であり、それをやめさせるための行動に出ることがある。この意味での「コミットメント」は、自分の選好順序に基づく選択にしか関心のない合理的経済人では理解できない。しかし、センは、コミットメントのような道徳感情を無視して、真の意味での「福祉」の経済学はあり得ないと考えた。センの仕事の意義は、長い間、正当に評価されなかったが、今やセン研究者は世界中に大勢いる。
Amartya Sen,"Rational Fools: A Critique of the Behavioral Foundations of Economic Theory," Philosophy and Public Affairs, vol.6,no.4.(Summer, 1977),p.336.