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【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第23回 ロバート・E・ルーカス=トーマス・J・サージェントの名言

"Since its inception, macroeconomics has been criticized for its lack of foundations in microeconomic and general equilibrium theory."
Robert E. Lucas,Jr.and Thomas J. Sargent(1979)

 第二次世界大戦後の経済学界は、長いあいだ、サムエルソンの「新古典派総合」によって支配された。新古典派総合とは、ケインジアンのマクロ経済学と新古典派のミクロ経済学を折衷したものだったので、その理論的基礎はもともと強固なものではなかった。だが、サムエルソンのようなバランス感覚に優れた指導者に恵まれたおかげで、1970年代前半までは学界の主流であり続けたと言ってよい。
 ところが、ロバート・E・ルーカス=トーマス・J・サージェントは、新古典派総合の折衷を廃し、マクロ経済学をミクロの経済主体の最適化行動から構成し直すという「マクロ経済学の基礎づけ」をもってケインジアンへの反撃を開始し、1980年代には彼らを主流派の座から引きずり下ろすことに成功した。いわゆる「反革命」が成功したのである。
 現代のマクロ経済学は、新古典派であれ、ニュー・ケインジアンであれ、すべてミクロ的基礎をもっている。ルーカス=サージェントへの反論は、いくつもあるが、いまだ学界の主流派には受け容れられていない。

 「その発端から、マクロ経済学は、ミクロ経済学的および一般均衡理論の基礎を欠いていると批判されてきた。」

Robert E. Lucas,Jr.and Thomas J. Sargent," After Keynesian Macroeconomics," Federal Reserve Bank of Minneapolis Quarterly Review, vol.3, no.2 (Spring 1979),p.4.

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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