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【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第7回 ラルフ・G・ホートレーの名言

"Thus by giving the order to produce, the merchant indirectly creates in this new accession of purchasing power an effective demand for things equal in value to those produced. Production feeds demand, and demand stimulates production."
Ralph G. Hawtrey(1919)

 ラルフ・G・ホートレーは、「ケインズ革命の相対化」という最近の学界の流れのなかで著しく復権を遂げた。一貫して大蔵省で金融問題の専門家として仕事し、いわゆる「大蔵省見解」でケインズと対立したので、長い間、その業績が過小評価された嫌いがある。だが、ここ数十年、ホートレーが信用貨幣論でポスト・ケインズ派の先駆的な仕事をしていたことが見直されるようになっている。

 「かくして、生産の注文を出すことによって、商人は間接的に、この新しい購買力の増加によって、生産された物の価値と等しい有効需要を生み出すのである。生産は需要を培い、需要は生産を刺激するのである。」

 ホートレーは、銀行信用の増減が「商人」の保有在庫の変動を通じて経済活動を拡大または縮小させると考えたが、銀行信用に注目した貨幣供給論はポスト・ケインズ派の内生的貨幣供給論の先駆的アイデアである。だが、ホートレーがケインズ革命のすべてを「予見」してわけではないので、過大評価は禁物である。

Ralph G. Hawtrey, Currency and Credit, 1919, p.376.

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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