第7回 ラルフ・G・ホートレーの名言
"Thus by giving the order to produce, the merchant indirectly creates in this new accession of purchasing power an effective demand for things equal in value to those produced. Production feeds demand, and demand stimulates production."
Ralph G. Hawtrey(1919)
ラルフ・G・ホートレーは、「ケインズ革命の相対化」という最近の学界の流れのなかで著しく復権を遂げた。一貫して大蔵省で金融問題の専門家として仕事し、いわゆる「大蔵省見解」でケインズと対立したので、長い間、その業績が過小評価された嫌いがある。だが、ここ数十年、ホートレーが信用貨幣論でポスト・ケインズ派の先駆的な仕事をしていたことが見直されるようになっている。
「かくして、生産の注文を出すことによって、商人は間接的に、この新しい購買力の増加によって、生産された物の価値と等しい有効需要を生み出すのである。生産は需要を培い、需要は生産を刺激するのである。」
ホートレーは、銀行信用の増減が「商人」の保有在庫の変動を通じて経済活動を拡大または縮小させると考えたが、銀行信用に注目した貨幣供給論はポスト・ケインズ派の内生的貨幣供給論の先駆的アイデアである。だが、ホートレーがケインズ革命のすべてを「予見」してわけではないので、過大評価は禁物である。
Ralph G. Hawtrey, Currency and Credit, 1919, p.376.