第36回 ジョーン・ロビンソンの名言(2)
"The second crisis is quite different. The first crisis arose from the breakdown of a theory which could not account for the level of employment. The second crisis arises from a theory that cannot account for the content of employment."
Joan Robinson(1972)
ジョーン・ロビンソンは、ケインズ革命後、急速に左傾化し、みずから「左派ケインジアン」を名乗るようになった。マルクス主義にも造詣の深かったカレツキやスラッファなどの影響はあったかもしれないが、彼女がよく語った、自分の家系に流れる「造反の血」のなせるわざと考えれば意外に納得がいくかもしれない。中国の文化大革命を礼賛した姿も、その延長線上にある。
「第二の危機は、全く異なっています。第一の危機は、雇用の水準を説明することができなかった理論の崩壊から生じました。第二の危機は、雇用の内容を説明することができない理論から生じているのです。」
以上は、アメリカ経済学会での講演「経済理論の第二の危機」(1971年12月)にある有名な言葉である。ときの会長がガルブレイスでなければ、アメリカではあまり左翼的にみえる彼女が招聘されることはなかっただろう。経済学の第一の危機は、当時の新古典派が雇用「水準」の理論を説明できなかったがゆえに生じた。しかし、その問題は、ケインズ革命が一応解決してくれた。ところが、いまの第二の危機は、雇用の「内容」を説明できないがゆえに生じているというのだ。雇用を軍産複合体の維持で守っても国民の真の福祉は向上しない。いまこそ、雇用の「内容」を問うべきだという熱いメッセージ。
Joan Robinson,"The Second Crisis of Economic Theory," American Economic Review, vol.62, no.1/2(March 1972),p.6.