第21回 ミルトン・フリードマンの名言
"To state this conclusion differently, there is always a temporary trade-off between inflation and unemployment; there is no permanent trade-off."
Milton Friedman(1968)
ミルトン・フリードマンは、サムエルソンと並んで現代経済思想にはなくてはならない名前である。彼は真の意味で「シカゴ学派」の指導者である。以前は、フランク・H・ナイトとジェイコブ・ヴァイナーの二人をシカゴ学派の指導者と呼んでいたが、しかし、この二人は、その思想の一部がフリードマンに影響を与えたとは言えても、決してフリードマンほど自由放任主義に近い主張をすることはなかった。私は、自由市場の役割を最大限に評価し、今日の意味での「シカゴ学派」を創り上げたのは、フリードマンのリーダーシップによるところ大であると解釈している。
「この結論を別の形で表現すると、インフレーションと失業のあいだにはつねに一時的なトレードオフは存在するが、決して永続的なトレードオフはないということだ。」
ケインジアンが依拠した、インフレと失業のあいだのトレードオフを表したフィリップス曲線を俎上に載せ、短期的にはそのような右下がりの曲線があったとしても、長期的には、それは自然失業率を通る垂直線になると反論した彼の主張(自然失業率仮説)は現代マクロ経済学の展開に大きな影響を与えた。1970年代を通じて、アメリカでケインズ主義が退潮し、新自由主義勃興の基礎を築いた。
Milton Friedman," The Role of Monetary Policy," American Economic Review, vol.58, no.1(March 1968),p.11.