第5回 フランシス・イシドロ・エッジワースの名言
"The first principle of Economics is that every agent is actuated only by self-interest. The workings of this principles may be viewed under two aspects, according as the agent acts without, or with, the consent of others affected by his action. In wide sense, the first species of action may be called war; the second, contract."
Francis Ysidro Edgeworth(1881)
アイルランド出身の経済学者、フランシス・イシドロ・エッジワースの『数理心理学』の原書を初めて見たのは、若かりし頃、場所は清水幾太郎の研究室だった。清水氏の名著『倫理学ノート』(岩波書店、1972年)にも出てくる。風変わりな書名だなと思ったものだが、現時点で評価すれば、エッジワースのボックス、契約曲線、極限定理など、マーシャルよりも現代のミクロ経済学に直結する貢献をした偉大な経済学者と呼んでもよいだろう。
「経済学の第一原理は、すべての主体を動機づけるのは利己心のみだということだ。この原理がどのように作用するかは、二つの局面のもとで考察できるだろう。すなわち、その主体の行動が、彼の行動によって影響を受ける他者の同意がないのか、それとも同意があるのかに応じて、ということだ。広い意味では、最初の種類の行動は戦争、そして、第二のそれは契約と呼ばれるよう。」
この言葉の意味は深い。『数理心理学』を読み終えたあとでなければ、その真の意味は理解できないかもしれない。清水氏はとてつもない本を見せてくれたことになる。
Francis Ysidro Edgeworth, Mathematical Psychics: An Essay on the Application of Mathematics to the Moral Sciences, 1881,pp.16-17.