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【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第8回 アルヴィン・H・ハンセンの名言

"But for our purpose we may say that the constituent elements of economic progress are (a) inventions, (b) the discovery and development of new territory and new resources, and (c) the growth of population." 
Alvin H. Hansen(1939)

 アルヴィン・H・ハンセンは、いまでは、アメリカを代表する初期のケインジアンとして知られているが、ケインズの『一般理論』に初めて接したときは、それほど革命的な著作だとは思わなかったようだ。だが、ハーヴァード大学に移籍してまもなく、誰よりも熱心なケインジアンとなった。そこでとどまらず、彼はさらに成熟した資本主義国における長期停滞論を打ち出していくが、その論拠となったのが、上の英文に出てくる要因のどれもあてにならくなったということだった。

 「しかし、私たちの目的にとっては、経済進歩を構成する要因は次の三つだと言ってもよいだろう。すなわち、(a)発明、(b)新しい領土や新しい資源の発見と開発、そして(c)人口成長、であると。」

 ハンセン説は、当時ハーヴァード大学の名物教授だったシュンペーターによって「創造的破壊」の過程としての資本主義の本質を知らない者の戯言だと批判されたが、第二次世帯大戦後、ハンセンは自説を撤回し、今日でいう混合経済論の熱心な支持者となった。アメリカでケインズ理論を普及させた功績は大きい。

Alvin H. Hansen,"Economic Progress and Declining Population Growth," American Economic Review, vol.29,no.1(March 1939)

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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