第16回 オスカー・ランゲの名言
"Professor Mises' contention that a socialist economy cannot solve the problem of rational allocation of its resources is based on a confusion concerning the nature of prices."
Oskar Lange(1938)
ロシア革命によって社会主義政権が誕生してまもなく、オーストリア学派の経済学者ミーゼスが、社会主義の下では生産手段の市場価格が存在しないので、合理的な経済計算はできなくなるという問題提起をおこなった。これが社会主義経済計算論争の口火を切ったわけだが、ポーランド出身の社会主義者で、なおかつワルラスの一般均衡理論に関心をもっていたオスカー・ランゲが次のように反論した。すなわち、「価格」は広義には「財の代替比率」と捉えられるので、資源の合理的配分の問題は、代替財の選択問題に他ならず、消費者の選好表や利用可能な資源の情報が所与ならば、代替比率は生産関数によって決定される、と。ランゲは、社会主義の下でも、このような一般化された意味での「価格」の機能を有効に活用できるというのである。
「社会主義経済はその資源の合理的配分の問題を解決することができないというミーゼス教授の主張は、価格の本質についての混乱に基づいている。」
ランゲの主張は、社会主義者ばかりでなく、一般均衡理論に造詣の深いシュンペーター によっても支持された。彼の才能が最も輝いていた頃の作品である。
Oskar Lange, "On the Economic Theory of Socialism," in Oskar Lange and Fred M. Taylor, On the Economic Theory of Socialism,1938,p.59.