第18回 フランク・H・ナイトの名言
"To preserve the distinction which has been drawn in the last chapter between the measurable uncertainty and an unmeasurable one we may use the term "risk" to designate the former and the term "uncertainty" for the latter."
Frank H. Knight(1921)
フランク・H・ナイトは、保険のかけられる「リスク」とかけられない「不確実性」を区別したシカゴ大学の経済学者(フリードマンやスティグラーなどは、みな彼から経済理論を学んだ)として知られているが、彼の著書『危険・不確実性・利潤』(1921年)が読まれることはほとんどなくなった。彼のいう「不確実性」は、ケインズの意味での「不確実性」とほとんど同じなので、アメリカでケインジアンが嫌いな人はナイトの意味での「不確実性」という言い方を好むらしい。
ナイトは、不確実性に直面した企業家の対処能力の差異が「利潤」を生み出す源だと考えた。優れた経済理論家だった一方で、「競争の倫理」と題する論文に示されているように、フリードマン流の「シカゴ学派」とは違う、「適度に」懐疑主義的な社会思想家でもあった。
「前の章で計測できる不確実性と計測できない不確実性を区別したが、その区別を維持するために、前者を指すために「危険」という用語を、後者のために「不確実性」という用語を使えよう。」
Frank H. Knight, Risk, Uncertainty and Profit,1921,p.233.