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【根井ゼミ】「1日1文 経済学の名言」根井雅弘

第38回 クレーゲルの名言

"To historians of economic theory the triumph of the neoclassical synthesis should appear as most inappropriate, for the basis of Keynes's formal training in the economics of Ricardo and Marshall left a strong imprint on his own contributions to economic theory. It would seem more appropriate to link Keynes's own theory with the long-period theory of the classical political economists."
J.A.Kregel(1973)

 ポスト・ケインジアンというと、イギリスのケンブリッジ大学に籍をおいたジョーン・ロビンソンやカルドアなどが頭に浮かぶかもしれないが、アメリカにも、少数派ながら彼らの同調者はいる。ケンブリッジに学んだJ・A・クレーゲルもその一人。

 「経済理論史家にとっては、新古典派総合の勝利は、きわめて似つかわしくないように見えるに違いない。なぜなら、ケインズの正規の訓練の基礎がリカードとマーシャルの経済学にあることが、彼自身の経済理論への貢献にも強力な痕跡を残したからである。ケインズ自身の理論を、古典派経済学者の長期理論と関連づけたほうがもっと適切であったように思えるだろう。」

 ケインズ理論を古典派の長期的理論と結びつけるという発想は、ジョーン・ロビンソンやイートウェルなどとも共通する。まぎれもなくポスト・ケインジアンの証である。

J.A.Kregel, The Reconstruction of Political Economy: an Introduction to Post-Keynesian Economics,1973, Preface.

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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