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福島祥行+國枝孝弘「ヨシとクニーのかっ飛ばし仏語放談」

第1回 少年時代と仏語への道

まずは他己紹介から

ヨシ:はい、はじまりました「ヨシとクニーのかっ飛ばし仏語放談」。略して「よくかふ」。
クニー:いや、べつに略さなくても。
ヨシ:さよか。
クニー:ぼくたちが、フランス語の初級から中級の話題を中心に、いろんなことを話していく連載です。
ヨシ:というわけで、第1回目は、われわれの紹介と、外国語への接し方についてかっ飛ばしまっせ! まずは、われわれの他己紹介から。
クニー:え、自己紹介じゃないの?
ヨシ:ぼくとクニーの仲やがな。
クニー:はあ。
ヨシ:こちら、クニーこと、國枝孝弘先生。えーと、ご出身は岐阜県で──。
クニー:とかいいながら、ウィキペディア見ながらいわないでくださいよ。
ヨシ:なんと高校はぼくの大学の同級生とおんなじところをご卒業や!クニーは、ぼくより2歳下やから、ぼくの同級生とはおなじ時期に在校してるはずやん!
クニー:そんなことはいいですから。
ヨシ:大学は、法学部をご卒業ののち、大学院から文学研究科にすすまれたと。
クニー:じつは、4年生になってみて、就職活動すんのがイヤだな、そうだ大学院いこう、って感じで。
ヨシ:それから、フランスのトゥールーズ大学に留学後、慶應大学湘南藤沢キャンパスの先生に採用されて帰国、現在にいたると。フランスで書かれた博士論文は、19世紀フランスの作家ジュール・バルベー・ドールヴィイJules BARBEY D’AUREVILLYについてでしたが、このごろは、戦争とかの強い喪失体験の「記憶」が《藝術作品》によって、いかに受けつがれていくかということを研究中。
クニー:だいぶ前になりますが、『ふらんす』でも「喪失と回想」というタイトルで連載させてもらったこともあります。
ヨシ:さらに、言語教育/学習ももうひとつの研究テーマで、NHKのフランス語講座の講師を、テレビもラジオもやってはります。
クニー:こちら、ヨシこと、福島祥行先生は、大阪のご出身。6年間一貫の男子校で女子に縁のない生活を送られたあと、大学入学。最初から文学部でした。
ヨシ:なにしろ、文学部ってのは、女子が男子の倍いるところでしたから、男子校出身者としては、女子とのコミュニケーションに苦労しました。
クニー:その後、大学院、非常勤講師生活をへて、現在は、大阪市立大学文学部の先生に。
ヨシ:大学4年生のときに、いちおう就職活動したんですが、最後に受かったのが大学院の試験だけでして。
クニー:ぼくもです…。で、研究面では、冠詞の研究をつづけるうち、コミュニケーションの研究にシフトして、博士論文は、文法現象をコミュニケーションの面から分析、話し手がひとりでつくるんじゃなく、話し相手との協働によってつくりあげることを実証する内容に。
ヨシ:むかし、この『ふらんす』でも、その内容で連載をやりました。
クニー:そのコミュニケーション研究を応用して、言語教育/学習も研究中。さらに、ヨシもNHKラジオのフランス語講座の講師やってます。
ヨシ:ウィキペディアにぼくの項目ないのんに、よう調べはった。
クニー:いやいや、ぼくらの仲でしょう。

仏語への道は文学から

ヨシ:クニーは、東大仏文でサルトルの影響下に出発した大江健三郎ずきの文学少年やったみたいですが、やはりそのせいで、フランス語を?
クニー:そうですね。ほかにも、安部公房、埴谷雄高もすきです。あと、ロック少年でしたね。
ヨシ:大学時代は、ベース弾いてはったそうで。音楽方面も、やはりフランス?
クニー:いや、メインはブリティッシュロックですね。いまでも英語一本槍。
ヨシ:映画青年でもあったそうで?
クニー:贔屓の御三家はキアロスタミ、侯孝賢(ホウシャオシェン)、カウリスマキで、イラン、台湾、フィンランド。フランスはなし。
ヨシ:まあ、みんな、仏語映画撮ってますし。それに、ちかごろじゃ、カナダの仏語圏監督、グザヴィエ・ドランにもハマってはるそうやないですか。
クニー:いやあもう、魂の根底を揺すぶられました。ドラン映画って音楽の使われ方も最高です~。
ヨシ:で、フランス語は、やはり、大学からですか?
クニー:まあ、そうなんですが、4年生まではバンドにあけくれてましたから。
ヨシ:あゝ(察し)。
クニー:大学院受けるということで、東京、御茶ノ水のアテネ・フランセのサンテティックに通ったのが、実質的な最初のフランス語経験ですね。
ヨシ:1日7時間ぶっとおしを週3日でフランス語づけにするという、あのサンテティックですな。
クニー:そうです。ついでにいうと、そこで同級生だった立教大学の仏文の院生のひとに、こんど院受けるんですけど、なに研究したらいいですかねえときいたら、バルベー・ドールヴィイがいいよ、っていわれて、バルベーをはじめて知りました。
ヨシ:そんなところに、入口が。
クニー:ヨシも文学少年でしたよね?
ヨシ:安部公房ずきの中学生でして、高校のときは文芸部で同人誌だしてましたね。けど、毎月『海燕』とか『海』とかの文藝誌で、日本の短篇ばっかり読んでました。
クニー:どちらも、もうありませんねえ。
ヨシ:まあでも、文学ならやっぱりフランス語やいうことで、大学はいったらフランス語とろうとは思ってました。
クニー:でも、ずっと国文志望だった?
ヨシ:国語学がやりたかったんですよね。当時の大阪市立大学国文には、井手至、塚原鉄雄という国語学界のビッグネームがふたりもいらっしゃいまして。
クニー:それが、けっきょく仏文に?
ヨシ:専門にわかれるのが2年生からやったんですけど、1年間いろいろ情報を得て検討の結果、国文カルチャーはぼくには合わんやろうと。
クニー:でも、フランス語はさいしょからがんばったんですね。
ヨシ:中学生のさいしょに怠けたせいで、英語はずっと落ちこぼれでして、その轍は踏むまいと思って気張りました。
クニー:その後に演劇青年に?
ヨシ:いまもやってますけど、なかなか舞台にたつヒマがなくなりまして。さいきんは、アニメ特撮中年ですな。
クニー:なるほど。つまり、ザックリいうと、ぼくたちは、ふたりとも、文学少年から出発し、なんだかんだあって、フランス語に到ったわけですね。
ヨシ:ザックリしすぎやおまへんか?

ネイティヴのように話せるか?

ヨシ:でも、クニーは、アテネ・フランセで発音から集中的・本格的に学んだいうことで、結構、さいしょから話せたんやないの? ぼくは、昔ながらの文法訳読法の授業で、初級文法を半年チョイで終えて、あとはかんたんな読み物よんでたけど、会話のほうはナカナカ……。
クニー:発音は、さいしょから、例の「母音の台形」とかで、しくみを徹底的におしえられて、あとは練習でしたね。会話といっても、伝統的教材で勉強しましたから、表現が古くて、フランスいってから、「本のようにしゃべる」っていわれましたよ。
ヨシ:それは「あるある」ですな。
クニー:単に友だちに「困ったね」というのをC’est une situation fâcheuse. なんてむちゃくちゃ固い表現使って、いまはC’est chiant. だっていわれたりね。
ヨシ:まあ、しかし、さいきんメジャーになりつつある、ヨーロッパ評議会がさだめた外国語を学び、教えるさいのガイドラインである「ヨーロッパ言語共通参照枠」Common European Framework of Reference for LanguagesいわゆるCEFRでも、究極のモデルとして、「理想的なネイティヴ」を設定するような考え方は古いというてますしね。
クニー:ぼくも、ネイティヴがいうから、そういわなきゃいけないってことはないと思いますね。たとえば putain(ちぇっ/売女)ってことば、ぼくは使いたくないから使いません、いくらもともとの意味を意識しないで、ふつうに使うネイティヴが多いとしてもね。
ヨシ:この話は奥深いので、次回につづけましょ。
クニー:という感じで、これからぼくらの放談がつづきます。
ヨシ:動詞の活用とか、前置詞の使いわけとかのハナシもする予定ですんで、よろしうご贔屓のほどを。

 

◇初出=『ふらんす』2016年4月号

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著者略歴

  1. 福島祥行(ふくしま・よしゆき)

    大阪市立大学教授。仏言語学・相互行為論・言語学習。著書『キクタンフランス語会話』

  2. 國枝孝弘(くにえだ・たかひろ)

    慶應義塾大学教授。仏語教育・仏文学。著書『基礎徹底マスター!フランス語ドリル』

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