日本人の悲願

日本の悲願、凱旋門賞
フランスの大衆的なカフェ、バーは、タバコ屋と宝くじ売り場、場外馬券売り場を併設しているところも多い。近年、特にパリでは、中国人によって買われた店舗が増加し、私の近所のカフェも最近オーナーが変わった。店員が中国人になっても客層が変わることはなく相変わらず地元の人の憩いの場であり、テーブル席には競馬新聞を広げる人がいて、宝くじやたばこを購入する人が常に出入りしている。レストランではないから、オーナーが変わっても店員が入れ替わりせいぜい内装に手が加えられるくらいで、タバコの味も賞金の額も変わるわけではない。私もたまに立ち寄るが、10月はjaponais、japonなどの単語を耳にすることが増える。凱旋門賞があるからだ。
10月第1日曜日にブーローニュの森の北東にあるロンシャン競馬場で開催される世界的大レースで、日本の競馬界、競馬ファンにとって凱旋門賞制覇は長年の夢である。2013年の2着を最後に、上位入賞から遠ざかっている。凱旋門賞に出馬する頭数も年々増え、今年も7頭が登録されている(全てが出走できるわけではない)。2022年には出走馬20頭中4頭が、2025年には17頭中3頭が日本馬だったが、凱旋門賞制覇への道は険しいと言わざるを得ない結果に終わった。日本からの出走馬が増えるということは日本の関係者もそれだけ多くが渡仏し、期待に応じて日本からのファンも増える。円安で日本人観光客は減少するなか、10月だけは少し増加するようだ。こうした日本人の凱旋門賞熱はメディアでも取り上げられ、「日本の競馬界」ではなく「日本人」の悲願として、一種の社会現象のように捉えられている。
会場まではメトロとバス、徒歩で行くが、日本人が大勢いるので流れについていけば問題なくたどり着ける。現在の凱旋門賞のスポンサーはカタール競馬馬事クラブで、競馬場はまるでアラブの競馬場のような雰囲気になっている。一般の入場にはドレスコードはないが、社交場の伝統から、装飾を施した帽子やヘッドドレスを被った女性に限り入場無料となる。スタンドから観戦するだけなら20ユーロから、パドックも見るには60ユーロから、という具合に料金が設定されていて、シャンパンを片手に特別展望席からレースが鑑賞できるVIP席もある。
1969年のスピードシンボリに始まりこれまでに38頭が挑戦、最高順位は2着(4回)である。凱旋門賞初制覇という歴史的瞬間が訪れるのはいつか。「カタール凱旋門賞」(正式名称)となってからは中国人経営のカフェで日本馬の快挙を待つことにしている。



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