2017年6月号 日本生まれフランス育ちのアキヒロ
日本生まれフランス育ちのアキヒロ
フランスで将来の活躍が期待されているAkihiroをご存知だろうか。アキヒロ、日本人の名前のようだが、フランス競馬界で注目されている馬の名前である。ディープインパクトを父にもつ日本生まれのアキヒロは、すでに日本の競馬ファンの間でも知られている。フランスのG1を制覇したディープインパクト産駒には、ビューティーパーラー(プール・デッセ・デ・プーリッシュ、2012年)、エイシンヒカリ(イスパーン賞、2016年)がいる。昨年凱旋門賞に挑戦したマカヒキも記憶に新しいが、今年はアキヒロに父が果たせなかった凱旋門賞制覇の期待がかけられることになるかもしれない。
アキヒロの馬主はシャネルのオーナーでもあるヴェルテメール兄弟で、ソレミア(2012年凱旋門賞1着)やアンテロ(2013年ジョッケクルブ賞1着)などを生産・所有している。アキヒロは2016年にデビュー戦1着(2着入線からの繰り上げ)、2戦目のシェーヌ賞(G3)1着の成績で、今年の4月16日に行われたノアイユ賞(G3)に出走した。ノアイユ賞は仏ダービーとも言われるジョッケクルブ賞Prix du Jockey Clubの前哨戦の一つで、順調に行けばこの後クラシック路線から凱旋門賞という道が開かれている。1.4倍(1番人気)のオッズがついたノアイユ賞では惜しくも2着に終わったが、7か月ぶりのレースであったことなどを踏まえるとまだまだ期待ができそうだ。
フランスの3歳クラシック三冠は一般に、牡馬はプール・デッセ・デ・プーラン(5月14日)、ジョッケクルブ賞(6月4日)、パリ大賞典(7月14日)、牝馬はプール・デッセ・デ・プーリッシュ(5月14日)、ディアヌ賞(6月11日)、ヴェルメイユ賞(9月10日)を指す。近年では2008年に牝馬クラシック三冠と凱旋門賞制覇を成し遂げ3歳で引退したザルカヴァが有名だが、日本ほど三冠にこだわる傾向はなく、イギリスのクラシックレースに挑戦することも多い。
今年も引き続きロンシャン競馬場が改修工事中であるため、ロンシャンで開催されるレースはシャンティイを始め、近郊の競馬場に割り振られている。ノアイユ賞は本来ロンシャンで開催されるが、今年はシャンティイで開催されたため、アキヒロはジョッケクルブ賞と同じコースでレースを行なうことができた。またプール・デッセ・デ・プーランとプール・デッセ・デ・プーリッシュは、ドーヴィルのコーナーがない直線コースで、ガーデンパーティでも有名なパリ大賞典はサンクルーで開催される。ドミニク・ペロー設計の新ロンシャン競馬場は来年の春競馬が始まる4月8日にこけら落としの予定だ。
◇初出=『ふらんす』2017年6月号