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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

スポーツ政策への抗議運動

 少し前の話になるが、ヴァカンスが明けてすぐの9月4日、ローラ・フルセルがスポーツ相の職を辞任した。フルセルの業績と言えばとくに2024年のパリ五輪の招致活動で、大会の会場となる場所の視察や国際オリンピック委員会総会などでマクロン大統領と並んだ写真が印象的である。辞任の理由は「一身上の都合」ということで政府側からの具体的な説明はないが、ル・モンド紙の調べによると、フルセルが自身の肖像権を管理する会社Flessel & Co. に脱税疑惑があり、近くに起訴される可能性があるとのことである。

 後任のロクサナ・マラシネアヌもフルセル同様に元五輪代表選手で、2000年のシドニー大会の競泳200 メートル背泳ぎで銀メダルを獲得している。引退後はラジオ、テレビ局の顧問を務め、2010年にイル・ド・フランス地方の議員として政界入りした。大臣就任後、政府の後援を受けた五輪招致活動とは違い、待っていた最初の仕事は重苦しいものだった。スポーツ省管轄のポストを2020年までに1600人分削減するよう首相官邸から要請されたのは7月末のことである。マラシネアヌは就任直後の9月10日に、この計画の対象とされる「スポーツ技術顧問が職を失うことはない」と述べつつ、その管理運営方法については協議を開始することにした。さらに24日には、スポーツ省の運営予算が前年度の6パーセント削減されることが発表され、関連団体、部署では不安と危機感を募らせている。

 こうしたスポーツ省における財政措置に対して、組合連合会はデモを呼びかけた。10月11日にはスポーツ省庁舎前および各地でデモが行われ、それぞれ数百人から数十人と小規模ながら、予算と人員の削減に対する抗議運動を展開した。予算、人員の削減は、各スポーツ連盟スポーツへの支援の縮小、フランスのスポーツ全体の衰退、スポーツ教育の質の低下へとつながる。パリ五輪で80個のメダル獲得を目指すフランスだが、フルセルが大臣に就任した当初、マクロン政権はスポーツ政策を重視していると思われたものの、スポーツの発展や教育という意味でのスポーツ政策はむしろ蔑ろにされている。

 フランス敗者連盟(FFL)という団体がある。フランスが負けることを願って2015年に創設された一種のジョークである。敗北を楽しむというコンセプトで、実際にはフランスを応援していないわけではない。フェイスブックのフォロワー数は約25万人に達し、人気上昇中だ。スポーツ省の削減措置の結果、この連盟だけは盛況を見せることになるかもしれない。

◇初出=『ふらんす』2018年12月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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