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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

峠の魅力:ツール・ド・フランス

 第106回ツール・ド・フランスが、7月6日に開幕する。マイヨ・ジョーヌ(総合1位の選手が着用する黄色いジャージ)の創設100周年にあたる今年は、ベルギーのブリュッセルをスタートし、ヴォージュ山脈から中央山塊を越えてピレネーへ向かう前半戦と、途中に移動を挟んでアルプスへ向かう後半戦でマイヨ・ジョーヌを争う。ピレネーでは定番のツールマレー峠、アルプスでは96年に積雪のためコース変更になったこともあるイズラン峠の頂上ゴールが見どころだろう。28日にパリで行われる最終ステージを前に順位は既にほぼ確定しているため、シャンゼリゼで行われるレースは凱旋パレードのようなものである。

 ヴァカンスシーズンでもある7月、ツール一行とともにキャンピングカーで移動し、観戦旅行を楽しむスタイルは、飛行機での移動が容易になった現在でも人気がある。テレビ中継でツールを観戦していると、特に山岳コースでは道路わきにキャンピングカーが並んでいる場面が映っている。山岳は自転車愛好者たちにも人気があり、シーズン中(6月~10月を除いて通行止めとなるところも多い)はアマチュアレースやツーリングイベントも多数開催されている。ツール関連では、レース開催中の7月21日に、アルプスで行われる第20ステージ(7月27日)の一部を走破するエタップ・デュ・ツールが有名だ。

 より本格的に山岳コースに挑みたいなら、シクロ・デ・グランド・アルプCyclo des Grandes Alpes がある。「シクロ」は、レマン湖の南側に位置するトノン=レ=バンから地中海沿岸のマントンまで、約1週間の行程で大アルプスルートを縦断するツーリングイベントで、サポートもしっかりしているため個人での参加でも安心だ。大アルプスルートは、最高到達点のイズラン峠(2770m)ほか、かつてツールで名勝負が演じられたガリビエ峠やイゾアール峠など17峠を含む総距離約700キロの観光用道路である。

 日本でも近日公開予定の短編『勇者たちの休息』は、数年前に定年を迎えた熟年サイクリストたち追うドキュメンタリー映画である。「シクロ」に参加し、ツールと同じコースを走る彼らの姿は、かつてのツールでの名勝負や過酷なコンディションでの迫力あるレース映像とは対照的だ。フランスでは、定年を機に自転車に乗り始める人が多いが、山岳に挑む「勇者」たちは、流行やブームとは違う何かが彼らを突き動かしていることを教える。それは一種の自転車哲学であり、あるいはいかにもフランスらしい動機である。興味のある方はぜひご観賞いただきたい。


Le Repos des braves 勇者たちの休息

◇初出=『ふらんす』2019年6月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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