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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

セーリング強国フランス

 セーリングは年間を通して行われるスポーツであるが、やはり夏がベストシーズンだろう。4年に1 度開催される単独無寄港世界一周レースのヴァンデー・グローブは10月から2月頃にかけて開催されるとはいえ、コースのほとんどは南半球である(半分以上は南極圏付近)。サッカー、テニス、自転車などの国際大会が目白押しの初夏、海上でも休みなしにイベントが続いている。

 「ラ・ソリテールLa Solitaire」は「孤独な生活をする人」といった意味になるが、これはヨットレースの名である。6月2日にナントをスタートしてチェックポイントを通過しながらアイルランド、イギリス、スペインの港との間に設けられた4区間でレースを行う。その名の通り、ヨットの乗員は1名である。今回が50回目の開催で、1970年の開催当初は「オーロル・レース」の名で行われたが、その後オーロル紙を買収したフィガロ紙がメインスポンサーとなり、ラ・ソリテール・フィガロが正式名称となる(他のスポンサー名も加わる)。

 5月10 ~ 15日にブルターニュで行われた「ソロ・コンカルノーSolo Concarneau」は、ラ・ソリテールの前哨戦のようなレースである。今年のソロで6年ぶり2度目となる優勝を果たしたアルメル・ルクレアックは、ヴァンデー・グローブ2017で大会新記録を更新して悲願の初優勝を成し遂げたが、昨年のルート・デュ・ラムでは転覆により棄権、2年あまりのあいだ優勝から遠のいていた。今回のソロではソリテールで使用するのと同じ艇体Figaro Bénéteaux 3を試すことができ、ラ・ソリテールへ向けて大きな弾みとなった。

 ヨットの470級とは艇体の全長が470メールという意味で、モノタイプ級のFigaro Bénéteaux 3 と比べると約半分の長さである。470級はオリンピック競技種目になっており、日本人がオリンピックのセーリング種目で過去に唯一メダルを獲得したカテゴリーでもある。5月6~ 14日にイタリアのサン・レモで開催された470級ヨーロッパ選手権で、女子でカミーユ・ルコワントル&アロイーズ・ルトロナス組が優勝、男子ではケヴァン・ペポネ&ジェレミー・ミオン組が3位と好成績を収めた。だが彼らの照準は8月25日~ 9月1日に江ノ島で開催されるセーリングワールドカップシリーズ、そして同じく江ノ島で開催される東京五輪にある。ソロで優勝したアルメル同様、ヨーロッパ選手権は彼らにとってテストレースのようなものだ。中でもカミーユ・ルコワントルはリオ五輪で銅メダルを獲得しており、江ノ島では金メダル有力選手の一人になるだろう。

◇初出=『ふらんす』2019年7月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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