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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

健康なフランスとスポーツ

 体を動かしたくなる衝動、それこそが春の訪れを告げると言えるかもしれない。フランスの風物詩的なスポーツイベントとしては、まだ冬の名残があるパリから暖かい陽光を求めてニースまで南下する「太陽に向かうレース」、パリ=ニース(3月10~17日)が有名で、テレビ中継を追っているとフランスの景色が徐々に春めいていく様子がよくわかる。そしてパリマラソン(ハーフは3月10日、フルは4月14日)もよく知られていて、パリの観光名所を通過しながら東西に横断するコースは、5万人ものランナーを世界中から引きつける。街中でもサイクリングやジョギングを愉しむ人が一気に湧き出すのがこの季節である。

 ところで、陸軍士官学校を卒業したピエール・ド・クーベルタンが近代オリンピックの開催を決意した背景には、スポーツの推進を通じて心身を鍛えるという教育的な狙いがあった。実際には政治的、あるいは商業主義的な、さまざまな思惑がオリンピックの価値を貶めているが、それでもやはり教育的効果はオリンピック開催の一つの賭金である。体を動かすことの面白さを説明しなければならない現代の子どもたちが、スポーツの愉しみを発見し、家の外に出て運動するきっかけにもなりうる。

 医師や専門家たちが集まり、2018年夏に創設した団体「健康なフランスのために」は、運動不足を原因とする病などが死亡原因の9パーセントを占めるフランスの現状を変えることを目指す。テレビやパソコン画面への依存度がますます高まっている青少年(もちろん大人も)は、心血管の病気や肥満の危機に晒され深刻な事態にあり、「健康なフランスのために」のミシェル・シメスは、五輪開催という機会を逃してはならないと言う。9月にはパリ五輪大会組織委員会会長トニー・エスタンゲが「健康なフランスのために」の支持を正式に表明し、健康とスポーツの推進をめぐる協力が確認されている。

 国民教育省は、子どもたちが定期的なスポーツの実践の利点を学ぶこと、教師が教育の中でスポーツを教育的ツールとして利用すること、またオリンピズムやハンディキャップに対する理解を深めることや、ボランティア活動への関心を呼び起こすことなどを目的として、2017年から「オリンピック・パラリンピック・ウィーク」を実施している。今年は2月4~9日の1 週間に、海外の政府認定校を含む各地の学校でさまざまな催しが行われ、国民教育省やスポーツ担当省の大臣、トニー・エスタンゲ、百数十名のアスリートらと子どもたちが、一緒にスポーツを楽しんだり、質疑応答したりする機会が設けられた。

◇初出=『ふらんす』2019年4月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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