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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

2017年4月号 春の風物詩

春の風物詩

 「スポーツの秋」という言葉があるが、フランスの秋と言うと、ヴァカンスが終わり、新年度が始まって忙しく、クリスマスまでの辛抱の時期で、あまりスポーツへの意欲がわかないのではないかと思うのは私だけだろうか。むしろ、日本の新年度が始まる4月の方が、スポーツの季節にふさわしい感じがする。

 「スポーツの春」を思わせる風物詩的スポーツイベントが、パリ・セミマラソン(3 月5日)とパリ・マラソン(4月9日)だ。私はヴァンセンヌの森の近くに住んでいるため、外に出れば年中ジョガーを見かけないことはないが、ちょうど家の近くがコースとなるこれらのマラソン大会を観戦していると、人々の走りたいという欲望が(国際的なレースであることは脇に置いて)フランス中から集まり炸裂したかのような印象を受ける。

 パリ・セミマラソンが開催される3月5日には、自転車ロードレースのパリ~ニースがスタートする。12日まで続くステージレース(全8ステージ)で、「セミ」ツール・ド・フランスとでも言ったところだ。陽光が眩しいニースに向かうことから、「太陽を目指すレース」course au soleil とも呼ばれ、レース集団peloton が南下するにつれて少しずつ気候が変わっていくのがわかる。またパリマラソンが開催される4 月9日にも、パリ~ルーベが開催される。こちらは一転、悪路と石畳pavé が選手たちを苦しめる過酷なレースで、「北の地獄」lʼenfer du Nord と呼ばれる。いずれも歴史あるレースで、パリ~ニースは今大会で75回、パリ~ルーベは115回を数える。

 屋外スポーツについては、最近は大気汚染の問題で健康上の懸念もある。パリではヴァンセンヌやブーローニュがスポーツには最適な場所のようにみえるが、実際にはその周辺に環状高速道路périphérique が通っており、むしろ汚染度は高いという指摘もある。それでは屋内でというわけで、近年急増しているスポーツジムに行くという選択肢もあるが、換気設備が不十分なジムでは汚染物質が滞留してかえって体に悪いという報告もあり、エコロジー・持続可能開発・エネルギー省はジム内の空気中汚染物質に関する監視指導を義務付けている。

 義務といえば、3月22日から、12歳以下の子どもは自転車に乗る際にヘルメットを着用することが義務化された(違反の場合は付き添いの大人に135ユーロの罰金)。フランスでは大人でもヘルメットの着用率は高く、どうせ義務化するのであれば大人も対象にしてしまっていいのではないか。その場合、ヴェリブvélibʼ(パリ市運営のレンタル自転車)に乗るときはヘルメット持参ということになるが。

 

◇初出=『ふらんす』2017年4月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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