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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

2018年6月号 ツール2018の展望

 今年のツール・ド・フランスは、7月7日から29日(22ステージ)にかけて行われる。通常は6月末にスタートするが、サッカーのワールドカップが開催されることを受けて日程が調整されている。近年では海外にスタート地点が設定されることが多かったが、今回は大西洋に面したヴァンデーからレースが始まり、ブルターニュ地方を時計回りに、ベルギーとの国境に近いルーベへと向かう。ルーベと言えば、「北の地獄」で知られるレース、パリ-ルーベでお馴染みの石畳コース(7月15日)を通過することになり、前半戦を締めくくる大きな見どころの一つだろう。

 20キロメートル以上も続く石畳の悪路で体力を消耗した後、飛行機移動での休息も束の間、後半戦はアルプスの山岳ステージが選手たちを待ち構えている。最も多くの観客が集まり、また数々のドラマを生んだ舞台でもあるアルプ・デュエズ峠(7月19日)では、今回も死闘が予想される。だが、まだここで潰えるわけにはいかない。雌雄を決する戦いは、もう一つの山場、ピレネーの山岳ステージに持ち越されることになる。特に68キロのコースの内40キロが登り坂で山頂ゴールとなる第17ステージ(7月25日)、アルプ・デュエズと並んでツールを代表する山岳コースのトゥールマレ峠(7月28日)は見逃せない。

 ツールの出場チームは、UCIワールドツアーに出場するチームの中から18チーム、さらにワイルドカードとして4チームがUCIプロコンチネンタルチームから選出される。すでに出場チームは決定しているが、出場選手については開催直前に各チームから発表されるのを待たなければならない。ワイルドカードで選ばれたチームの中にも注目選手は多い。ツールの総合ディレクター、クリスチャン・プリュドムChristian Prudhommeが「優勝させたい」と言うナセル・ブアニNacer Bouhanni、昨年ステージ優勝を2度成し遂げ、山岳賞と総合敢闘賞も受賞しているワレン・バルギルWarren Barguilなど、今年もレースを盛り上げることだろう。昨年3連覇を成し遂げた(総合優勝は4度目)クリストファー・フルームChristpher Froomに注目が集まるのは当然であるが、2017年のブエルタ・デ・エスパーニャでのドーピング検査で陽性反応が検出され、今回のツールへの出場が危ぶまれている。

 ドーピング問題に加え、自転車ロードレースでは、今年4月から車体にモーターが内蔵されていないかを調べるX線検査が行われることも決まった。不正行為が尽きることのないスポーツ界、今後も検査事項は増えていくばかりなのだろうか。

◇初出=『ふらんす』2018年6月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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