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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

2018年5月号 ロラン・ギャロスも改修

 5月にフランスで開催される有名なスポーツイベントといえば、やはり「ロラン・ギャロスRoland Garros」の名で知られる全仏オープン(5月21日~ 6月10日)だろう。会場となるスタッド・ロラン・ギャロスはパリ西部にあるブーローニュの森の南側に位置し、ロンシャン競馬場やパルク・デ・プランス(サッカーのクラブチーム、パリ・サンジェルマンのホームスタジアム)からもほど近い。先月はロンシャン競馬場のリニューアルオープンを話題にしたが、スタッド・ロラン・ギャロスの方も昨年から改修工事が始まっており、2020 年に完成する見通しだ。

 改修工事中とはいえ、全仏オープンの開催には支障のないように段階的に工事が進められる計画となっている。いくつかのコートは全面的に配置も変更されるが、男子決勝戦が行われるセンターコート(クール・フィリップ・シャトリエ)と女子決勝戦が行われるA コート(クール・スザンヌ・ランラン)は現在と同じコートである。最も大きく変わるのは、センターコートに開閉式の屋根が設置されることだ。雨で名勝負に水を差されることなく、また遅い日没の恩恵も失わない。15 分で開閉作業が完了する半透明の屋根は、複葉機の主翼をシンボル化したデザインである。ちなみに、スタジアムの名となっているロラン・ギャロスは、1913 年にコートダジュールのサン・ラファエルからチュニジアのビセルトにかけて地中海縦断飛行を達成したパイロットである。

 スタッド・ロラン・ギャロスも2024年のパリ五輪の会場であり、今回の改修工事もそれを見込んだ上で進められている。しかしこの改修工事は拡張工事でもあり、より多くの観客を収容するために、隣接する温室庭園の土地の一部に敷地を広げることに関して、2011 年からフランステニス連盟と反対団体との間で係争が繰り返されてきた。この問題に行政裁判所の決定で終止符が打たれ、いよいよ工事が開始されることになったのである。

 パリ五輪の開催が決定された時点で建設が予定されていたベルシーの第二アリーナは、付近住民らによる建設反対派が勝利をおさめ、ベルシー(12 区)ではなくポルト・ドゥ・ラ・シャペル(18 区)に建設されることが昨年末に決まった。パルク・デ・プランスはパリ五輪の流れに乗り、座席数を現在の約48 000 から60 000 に増設する計画を急いでいる。こちらも数年前から計画は持ち上がっていたが、ペリフェリックと住宅地が隣接する立地と構造上の問題から複雑な工事になることが懸念され、足踏みしているというのが現状である。

◇初出=『ふらんす』2018年5月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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