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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

2018年の最優秀アスリート

 日本では年の瀬が近づくと歌謡曲や流行語の大賞が話題になるが、フランスではスポーツで最も活躍したアスリートを選ぶ「チャンピオンの中のチャンピオン」Champion des champions が有名である。スポーツ紙レキップがフランス人最優秀アスリートと世界最優秀アスリートを選定するこの企画、前者は1946年以来、後者は1975年以来続く歴史を持っている。

 近年で言えば、世界最優秀ではミハエル・シューマッハ、ラファエル・ナダル、リオネル・メッシにウサイン・ボルトなど、誰もが知るアスリートの名が挙げられる。2018年は体操のシモーネ・バイルズ(アメリカ)とアルペンスキーのマルセル・ヒルシャー(オーストリア)が選ばれたが、大衆スポーツのアスリートではないため知らない人も多いかもしれない。フランス人最優秀アスリートに選ばれた1 人、陸上(10種競技)のケヴァン・マイエルKevin Mayer は、リオ五輪(2016年)で銀メダル、世界陸上(2017年)で金メダルを獲得、2018年にはタランスで開催された混成競技大会デカスターで世界記録を更新し、ヨーロッパ陸上連盟が選ぶ2018年のヨーロッパ最優秀アスリートにも選ばれている。最優秀に選出されたもう一人は柔道のクラリス・アグベニューで、2018年は世界柔道選手権ほか多数の世界大会を制し、無敗の成績で世界ランキング1位の座に堂々と君臨している。

 歴代の「チャンピオンの中のチャンピオン」の多くが五輪の金メダリストだが、2人とも五輪での最高成績は銀メダルにとどまる。フランスが五輪の陸上競技で金メダルを獲得したのは、今世紀に限って言えばルノー・ラビレニ(2012年、棒高跳)だけであり、他方で柔道は金メダル獲得常連の競技である。いずれの競技も東京五輪で注目が集まるのは必至だ。

 フランス人最優秀アスリートを選ぶもう1つの企画、RMCスポーツアワードは、今回で5回目を数える。こちらは一般投票形式で、ケヴァン・マイエル、サッカーフランス代表などノミネートされた他の候補者をおさえて最優秀に選ばれたのは、バイアスロンのマルタン・フルカドだった。フルカドも平昌五輪で3冠の偉業を達成し、最優秀たるにふさわしい成績を残した。

 2018年にフランスを最も熱くさせたのはサッカーの代表チームだった。日本のメディアで最も取り上げられたフランス人アスリートはサッカーのキリアン・エムバペだろうが、おそらくバロンドール(仏サッカー専門誌の賞)を手にしていたら、彼が最優秀アスリートに選出されていたかもしれない。

◇初出=『ふらんす』2019年3月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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