白水社のwebマガジン

MENU

「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

サッカーと男女の平等

 第8回サッカー女子ワールドカップが6月7日から7月7日にかけてフランスで開催される。昨年は男子の優勝でフランス全土が沸いた。サッカー大国のフランスでも、女子サッカーの人気は男子ほど高いとは言えないが、開催国として初優勝に大いに期待がかかる。フランス代表監督のコリンヌ・ディアクルは、昨年末に行われたグループリーグ組み合わせ抽選会で、「日本との対戦が避けられたのはよいニュースだ」と言っていた。日本の代わりにフランスと同グループになったノルウェーも過去に優勝経験がある強国で、昨年創設された女子バロンドール(サッカー専門誌が選出するヨーロッパ年間最優秀選手賞)を手に入れたアッダ・ヘーゲルベルクを擁する。ヘーゲルベルクはフランス国内リーグ(D1 フェミナン)で圧倒的な強さを誇るオランピック・リヨネに所属し、なでしこジャパンの熊谷紗希はチームメイトである。

 女性に注目が集まるこの世界的なスポーツイベントを、スポーツにおける男女の平等を実現、促進する機会として、フランス人が放っておくはずがない。特に目を引いたのは、フランスではBabyfoot と呼ばれるテーブルフットボールの試みだ。バーなどで時折見かけるBabyfoot は、諸説があるがフランス発祥であるとも言われている。B90 と呼ばれる150cm(長さ)× 100cm(幅)× 95cm(高さ)サイズが公式のサッカーコート(テーブル)で、その上に11人ずつの選手が配置され、両サイドの棒で選手を回転させて操作する。この選手、通常は「男子」なのであるが、スポーツの場での男女の平等を目指すアソシエーション「遊戯者に自由を」Liberté aux joueurs が「男子」11人と「女子」11人の混合(男子対女子ではない)にすることを提案、他団体やBabyfoot 競技台の大手メーカーの賛同を受け、女子ワールドカップの試合が行われるフランスの10都市で男女混合競技台を使った大会を開催する計画を進めている。

 サッカーのワールドカップは女子だけで行われるが、この男女混合競技台においては男女の「平等」が重要であり、男子選手22人の代わりに女子選手22人にしても意味がない。そもそも競技自体、バーで遊ぶ時と同じで男女関係なく行われている。ゲーム台の上の人形(選手)に過ぎないが、常にそれが「男子」であるという固定観念を取り除くことが大事で、サッカーであれBabyfoot であれ、あるいは他のスポーツでも、男女は関係ないという主張がここにある。最初に「女子サッカーの人気は男子ほど高いとは言えない」と書いたが、「フランスではサッカーの人気が高い」と言うだけにとどめておくべきであった。

◇初出=『ふらんす』2019年5月号

タグ

バックナンバー

著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

フランス関連情報

雑誌「ふらんす」最新号

ふらんす 2024年12月号

ふらんす 2024年12月号

詳しくはこちら 定期購読のご案内

ランキング

閉じる