フランスのサーフィン環境
フランスの面積は日本と比べて約1.5倍大きい。一方、日本の海岸線の長さはフランスより9倍長い。この数字に特に驚きはなく、圧倒的に長い海岸線をもつ海洋国日本のマリンスポーツ愛好者人口が多いということも不思議ではない。サーフィンに関していえば、海ならどこでもよいというわけではなく、波やうねりがなければならない。それでも日本なら、全国でサーフポイントを見つけられるだろう。フランスでは、約3 500キロメートルの海岸線のうち、サーフィンに向いているのは500キロメートルくらいだと言われている。フランスが面している海といえば地中海、大西洋、北海、イギリス海峡であるが、リゾート地のイメージがある地中海ではサーフィン向きの高い波は期待できない。大西洋側のビアリッツとソール・オスゴールがサーフィンの二大都市で、シーズンには各地からサーファーが集まり、さまざまなコンペが行われている。またブルターニュやノルマンディーの沿岸都市にもサーフィンスポットがある。
6月半ば時点での世界ランキング(世界プロサーフィン連盟、ワールドサーフリーグ)では、男子でジェレミー・フローレスJérémy Florèsの16位、女子でジョアンヌ・ドゥフェJohanne Defayの5位がフランス勢の最高順位であるが、ヨーロッパ勢のなかでも首位であり、またそれぞれ日本人選手より上位につけている。ワールドサーフリーグの登録選手数では、フランス人選手が367名なのに対して日本人選手は614名だが、人口比で考えれば比率は同じくらいだろう。サーフィン人口としては、日本は約200万人(総務省データ)、フランスは約50万人(フランスサーフィン連盟データ)であるが、意外とフランスにもサーファーが多いという印象を受ける。
ジェレミーは2008年に、ジョアンヌは2014年に、ワールドサーフリーグの年間新人賞を獲得している。サーフィンは2020年のオリンピックで初めて正式種目となり注目が高まっているスポーツで、彼らが出場する可能性も大いにある。フランスの水泳選手はマルセイユなど地中海沿岸都市のクラブ育ちが多いが、ジェレミーとジョアンヌもサーフィン環境が整ったビアルリッツやブルターニュ地方で育ったのだろうか。いや、実は二人ともレユニオン育ちで、現在もレユニオン島で、インド洋の波を待っている。
レユニオン島もサーフィンが盛んであるが、近年はシャークアタックによる被害が深刻である。環境保護団体の反発もあって駆除という選択肢は採れず、共存を目指した対策を講じなければならない。サーファーにとっては死活問題でもある。
◇初出=『ふらんす』2018年8月号