2017年11月号 マクロン政権とスポーツ
マクロン政権とスポーツ
9月13日に2024年夏季五輪の開催地がパリに正式決定した。これに先立って7月末にロサンゼルスが2028年開催を受け入れていたこともあり、この正式決定にはそれほどの驚きがなかったものの、過去に1992年、2008年、2012年の五輪開催地選考に破れているパリにとって、3度目となる五輪開催を100 周年の節目で開催できることになったというのはやはり明るいニュースである。
それから1週間後、ローラ・フルセルスポーツ担当相は、緊迫する北朝鮮情勢を懸念して、2018年2 月に開催される平昌冬季オリンピックへのフランス選手団の派遣を見送る考えを示した。フルセルはフェンシング(エペ)の五輪金メダリストで、先の大統領選挙では、柔道のリュシー・デコス、ダヴィド・ドゥイエ、競泳のヤニック・アニェルといった五輪金メダリストとともに、「スポーツが自由、平等、博愛の空間であるために」、エマニュエル・マクロンへの投票を呼びかけていた。スポーツ界はマクロン推し(反ル・ペンということだが)で、マクロン大統領は就任後すぐに五輪招致のプレゼンテーションにも意欲的に取り組み、パリがフランス全体に支持されて五輪を開催するかのように印象づけることに成功している。
ちょうど北朝鮮の問題が話題になっている頃、マクロン大統領はフルセルスポーツ担当相、パリ招致委員会共同会長トニー・エスタンゲ、IOC 会長トーマス・バッハとともに、五輪ヨット競技の開催地となるマルセイユを視察した。マルセイユと言えば、マクロン大統領は幼少期からOM(マルセイユに本拠地を置くサッカークラブチーム)の大ファンであり、彼自身もENA 在学中にフランスサッカー連盟のライセンスを取得している。大統領としてもスポーツへの高い関心を示し、国民のスポーツ推進を政策に取り入れていくことを表明している。
パリ五輪では、ほとんどの競技はパリ中心10キロ圏内で、乗馬、自転車、ゴルフなどがベルサイユ周辺で行われるが、サッカーはEURO2016 の時と同様に、フランス各地のスタジアムでも開催される。建設済みの施設のほかに、ベルシーには第2アリーナが建設予定になっている。しかし新たに建設されるもので最もインパクトが大きいのは、以前も書いたが、やはりメトロであろう。メトロの増設は、パリに住んでいる人でも知らない人は結構多い。パリ五輪の公式サイト(http://paris2024.org/fr)を見ると、すでに会場へのアクセスに16号線などと記されている(現在の運行路線は14号線まで)。
◇初出=『ふらんす』2017年11月号