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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

タヒチで開催されるパリ五輪

 2019年12月12日、パリ・オリンピック競技大会組織委員会は、2024年のパリ大会で実施されるサーフィン競技の開催地としてタヒチを選定したことを発表した。1月8日にIOC の承認を待ち、さらに東京大会での実施状況を検証した後、2020年12月に正式決定される。この発表は東京オリンピックのマラソン競技開催地が札幌に正式決定してから数日後のことで、日本でも多くの報道があったと思う。

 パリから約15,000キロメートル離れ、12時間の時差がある仏領ポリネシアのタヒチ。東京オリンピックが札幌で行われるということに違和感を覚える人も少なくないだろうが、パリとタヒチとなると別の国で開催されているようにさえ思えてしまう。しかし距離については特に問題にはなっていない。第一、そもそもパリ及び近郊ではサーフィンはできない。タヒチ以外には、ヨーロッパ有数のサーフィンエリアとして知られるビアリッツをはじめ、大西洋岸のラカノー、オスゴール・セニョス・カップブルトン、ブルターニュ地方のラ・トルシュが開催地に名乗りを上げていた。いずれの都市もパリから数時間かかり、パリ-ビアリッツと東京-札幌ではそれほど移動時間は変わらない。スポーツ担当相のロクサナ・マラシネアヌは、タヒチで開催する意図は「フランス全土を結び付ける」ことにあると言い、オリンピック組織委員会委員長のトニ・エスタンゲは「テレビでできる限り多くの人に最も美しいスペクタクルを送ることが重要である」と述べる。

 タヒチが選ばれる決め手になったのは、「波」である。統計的にオリンピックの時期に質のいい波が確実にあるということが他の候補地より抜きんでていたからである。その他の判断材料として、会場設備などにかかる費用、そしてCO2 排出量など環境面での影響が考慮されたが、それについてはいずれの候補地も大差がなかった。しかし、本当だろうか。環境への影響については、現在のフランス世論は特に敏感である。エスタンゲは、移動する選手が男女48名であり、その多くは近隣から移動する人が多いことや、観客数も少ないことなどを挙げ、移動に伴う環境への影響がより少ないとしている。この場合、メディアや関係者の存在、選手たちの開会式・閉会式への参加などは考慮されていないとして批判もある。

 確かにタヒチの美しい波が作るチューブは絵になる。しかし「最も美しいスペクタクル」どころではない重大事故につながるリーフ(珊瑚礁)の危険性についても懸念がある。会場となるチョーポーTeahupooは危険なエリアとして知られ、女子のワールドシリーズが開催されていないことから、別のスポットでの開催を検討するなどの課題も残る。

◇初出=『ふらんす』2020年2月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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