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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

パンテオンに祀られる偉人たち


前にツリーが並べられたクリスマス時期のパンテオン。ドームと円柱が特徴的な、堂々とした建築。

 パリのカルチエ・ラタンのシンボル、パンテオンは、政治家、レジスタンス活動家、作家、科学者など、それぞれの分野でフランスの歴史を形作った偉人たちを祀る場所です。もともとはパリの守護聖人である聖ジュヌヴィエーヴのための教会として設計されましたが、フランス革命期の1791年に国民議会が、ここを国の偉人たちの記憶を称える場所と決め、ギリシャ神話の神々にちなんで「パンテオン」と命名しました。

 パンテオンに祀ることをpanthéonisation(パンテオニザシオン)と呼びます。現在まで続く政治体制である第五共和政が1958年に始まってから、誰をパンテオンに祀るかの決定権は、大統領に委ねられています。パンテオンに祀られるためにどのような功績が必要なのかは具体的に法律などで規定されてはいませんが、国家や国民から認められるに足る偉大な人物であること、そして、共和国の価値観や理念を体現する人物であることが求められます。作家のヴィクトル・ユーゴーや、点字を発明したルイ・ブライユ、政治家のジャン・ジョレス、レジスタンス活動家のジャン・ムーランなど、現在パンテオンに祀られている人物の数は80を超えます。1995年、女性で初めてパンテオン入りしたのは、放射線の研究でノーベル物理学賞・化学賞を受賞したマリー・キュリーです。

 マクロン大統領も2017年の就任以来、人工中絶合法化に尽力した政治家シモーヌ・ヴェイユや、アメリカ出身のジャズ歌手で、レジスタンスに参加し、人種差別反対運動家でもあったジョゼフィン・ベイカー、アルメニア人でレジスタンス活動に身を捧げたミサク・マヌキアンとその妻メリネなどをパンテオンに祀ってきました。そして、1981年に成立した死刑廃止法の交付記念日である来月10月9日には、2024年に亡くなった弁護士で政治家のロベール・バダンテールがパンテオン入りする予定です。バダンテールは当時、ミッテラン大統領のもと法務大臣を務め、死刑廃止を実現した立役者、そして、その後も死刑反対運動に生涯を捧げた人物でした。

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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