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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

「ペット大国」フランスのエトセトラ


「フンは袋へ」と飼い主たちへのメッセージが書かれたヴェルサイユ市の歩道

 パリの美しい街並みを見上げながら歩いていて、うっかり犬のフンを踏んでしまったときのショックはとても大きく、「左足で踏むと良いことがある」という言い伝えも、あまり慰めにはなりません。パリでは2002年から犬のフンの処理が義務化され、違反すると罰金135ユーロが課せられますが、取り締まりが徹底されていないこともあり、犬のフンは相変わらず残念なパリ名物のまま。市の清掃員たちは毎日、20トン以上もの路上のフンを片付けていると言われています。
 フンの話題はこのくらいにして、フランス人とペットとの関係をより詳しく見てみましょう。例えばパリ市内ではおよそ10万匹の犬が飼われていて、路上やメトロで犬を見かけない日はありません。小型犬はケージなどに入れ、中型・大型犬はリードや口輪をつければ、メトロにも無料で乗ることができます。連れて入れるカフェやレストランも多く、気がついたら足元に隣のお客さんの飼い犬が寝そべっている、なんてことも日常茶飯事です。
 ペットフード連盟が2022年に行った調査によれば、フランスでは50%、つまり半数の世帯が何らかの動物を飼育しており、ヨーロッパ内ではトップ3に入るペット大国。飼育数が一番多いのは魚(2910万匹)ですが、これは水槽で同時にたくさん飼うことが多いためでしょう。いわゆるペットで一番多いのは猫(1490万匹)で、30%を超える世帯が少なくとも1匹は猫を飼っており、ヨーロッパではドイツに次いで2位の「猫好き国」です。犬は760万匹で、ちょっと意外なことに、フランスでは猫の数が犬のほぼ2倍ということになります。さらに鳥、ハムスターやモルモットなどの小動物、爬虫類が続きます。
 一方、主に夏のバカンス前の時期に、旅行に連れていけないからと捨てられる犬や猫が毎年後を絶たないという現実もあり、動物愛護のための規制はより厳しくなりつつあります。2022年6月からはマイクロチップの犬猫への装着が義務化されて、飼い主が特定できるようになりました。また、衝動的で無計画なペット購入を防止するため、今年1月からはペットショップの店頭での犬猫の販売も禁止になりました。今後はブリーダーから直接やペットショップのウェブサイトでの購入、保護施設からの引き取りなどに限られます。

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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