郊外へどんどん延びるパリのメトロ
天井に木の板がずらりと並ぶサン・ドニ・プレイエル駅の改札
1900年に誕生した最初の地下鉄1号線から、その98年後に開業した14号線まで、パリには14の路線が網の目のように走っています。どの路線も開業当初はパリ市内だけを走っていましたが、少しずつ郊外へと延びていき、現在、パリ市内だけを走るのは2号線と6号線のみ。パリと郊外を結ぶ交通機関としては他に、RER(高速郊外鉄道)やSNCF(国鉄)もありますが、朝晩のラッシュ時はかなり混雑しており、イル・ド・フランス地方全体の人口が1231万人(2021年)で、パリ市内人口213万人(同年)のほぼ6倍であること、郊外からパリとその周辺まで通勤・通学している人の数を考えれば、メトロの郊外への延伸も必要不可欠と言えるでしょう。
郊外への延伸は古くは1930年代から始まっていて、1934年には1号線がパリの東のヴァンセンヌ市へ、9号線がパリの西のブローニュ・ビヤンクール市まで延びました。その後もたびたび各路線の延伸が行われ、パリを取り巻く郊外の町に次々とメトロが開通。今年に入ってからだけでも、11号線がパリの東にある5つの市まで、14号線はパリの南の6つの市を通ってオルリー空港まで延びました。
今年開業した10を超える新駅のなかでも、最も注目を集めたのが14号線のサン・ドニ・プレイエル駅で、6月24日、マクロン大統領出席のもとオープンしました。ショパンが愛用したピアノを製造していたプレイエル社のアトリエがかつてこの地区にあったことから名づけられたこの駅は、サン・ドニ市にある14号線の北の終点で、新たに建設された歩道橋でRER D線のスタッド・ドゥ・フランス゠サン・ドニ駅とつながっており、さらに将来的には現在建設中のメトロ15号線、16号線、17号線も通って、1日に25万人が利用する重要な駅になる予定です。
この大きな駅の設計を手がけたのは、フランスをはじめ世界で活躍する日本人建築家、隈研吾氏。メトロのホームや、たくさんのエスカレーターが並ぶアトリウム、そしてファサードにいたるまで、オークやカラマツなどの木材がふんだんに使われており、従来のメトロ駅とは一線を画したデザインとなっています。