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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

文化と芸術のフランスの秋がやってくる

 気温も街の空気もすっかり秋めいてくる10月。芸術の秋の始まりを告げるのは、10月の第1土曜日の夜から日曜日早朝にかけて毎年開催される「ニュイ・ブランシュNuit Blanche=白夜」です。パリの街を舞台に、さまざまな芸術家たちが手がけたインスタレーションを眺めながら夜な夜なパリを散歩できる夢のような無料イベントで、2002年に始まって以来、人気を博しています。パリ中心部の広いエリアにまたがるインスタレーションやパフォーマンスのほか、夜通し開館する美術館やモニュメントもあります。道路に引かれたラインに沿って歩けば、メインのインスタレーションのみを迷わずに見学できる仕組みで、安心して夜のパリを歩けます。今年は新型コロナウイルスの影響で、例年とは異なる見学方法になる可能性が高いですが、開催される予定です。

 石畳に枯葉の舞う昔ながらのパリの秋を歩くなら、モンマルトルの丘がおすすめ。10世紀からブドウ栽培が行われてきたこの地区では、毎年10月第2週にブドウの収穫を祝う「収穫祭Fête des vendanges」が催され、かつて盛んだったブドウ栽培とワイン造りを今に伝えています。17~18世紀には丘の4分の3がブドウ畑でしたが、現在ではシャンソニエ「ラパン・アジル」の向かいの一角に残る小さな畑が昔の面影を今に残しています。

 10月はさまざまな見本市や展示会が開催される時期でもあります。最も有名なのは10月上旬に行われる世界最古で世界最大の来場者数を誇る国際自動車見本市「パリ モーターショー」(偶数年のみ)、そして10月末の「サロン・デュ・ショコラ」でしょう。世界60ヶ国から500以上の出展者を誇る世界最大のチョコレートの祭典で、カカオ豆の生産国から、今をときめくショコラティエが生み出す宝石のようなボンボン・ショコラまで、チョコレートに関わるすべて、そしてパンやパティスリー、コンフィズリー(砂糖菓子)など、パンとスイーツ全般が一堂に会します。ショコラティエとデザイナーのコラボで生まれる美しいチョコレートドレスのファッションショーや、有名ショコラティエのデモンストレーション、コンクールなど盛りだくさんで、ただのチョコ好きからプロまでみんなが楽しめる大人気イベントです。今年は残念ながら中止で、来年に延期となりました。次の10月には心おきなくチョコレートの世界に浸れますように…。


サロン・デュ・ショコラには毎年、巨大なチョコレートのオブジェが展示される

◇初出=『ふらんす』2020年10月号

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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