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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

アプリが変える食の安全性への意識

 フランスではここ20年ほどの間にビオ(オーガニック)食品の普及がぐんと進み、町にはビオ専門店が続々と誕生。一般的なスーパーにも必ずビオのコーナーがあるほどで、ドイツに次いで欧州第2位の市場規模を誇るオーガニック大国です。割高であるにも関わらず、7割の人が月に1度はビオ食品を買うと回答していることからも、その浸透度が伺えます。

 このように、フランスで健康や食の安全性への意識がどんどん高まっていることを実感させてくれたのが、2017年に登場した食品分析の無料アプリYukaです。安全な食生活を送るために、スーパーに並ぶ食品の安全性をわかりやすく判断できるツールを作りたいと考えた3人のフランス人が立ち上げ、現在はフランスを始め世界10カ国2100万人超のユーザーを誇るアプリに成長しました。バーコードをスキャンすると、まず「非常に良い・良い・普通・悪い」の4段階でシンプルに評価。さらに具体的に添加物とその評価、カロリー、糖分、油分、プロテイン、食物繊維量、環境負荷などを確認でき、おすすめの代替食品も教えてくれます。100%独立を保ち、他の企業やブランドの支援を受けていないのも信頼される理由です。これまで何の気なしに選んでいたお菓子や缶詰などの加工食品の安全性を簡単に確認できるこのツールが、消費者の買い物の仕方を変えたのはもちろんのこと、食品業界に与えた影響も少なくありません。個人的にそれを肌で感じたのは、このアプリが普及したのと同時期に、発がん性がありながら保存料として長く使われてきた亜硝酸塩の不使用を謳うハムやソーセージが急に増えたことでした。また、全国に1900近い店舗を展開する大手スーパーIntermarchéはYukaでの評価を向上させるべく自社ブランドの900の食品について添加物を低減する方針を発表しました。


Yukaの画面。この商品は《Mauvais》「悪い」の評価

 昨年3月半ばから2ヶ月続いた厳格な外出制限期間中に自分で料理をすることが増えたと答えたフランス人の割合は37%。その後も飲食店の閉鎖が長引き、家庭での食事の比重がさらに大きくなりました。美味しくて安全なものを食べたいという意識は、コロナ後のフランスでもますます高まっていきそうです。

◇初出=『ふらんす』2021年5月号

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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