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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

フランスの学校給食にまつわるエトセトラ

 コロナ禍で世界的に大きな影響を受けたもののひとつに学校があります。フランスでは最初のロックダウン開始と同じ週の2020年3月16日から全国の保育所、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学が一斉休校となり、段階的な再開が始まった5月11日まで続きました。この時期、仕事や家事をしながら子供たちの勉強を手伝ったり、朝昼晩の食事のループが永遠に続く大変さを味わったりして、学校や給食のありがたみを再確認した保護者も多かったことでしょう。今回は日本との違いもいろいろあって興味深い、フランスの給食に注目したいと思います。

 全体のおよそ8割を占めるフランスの公立学校では、幼稚園と小学校の給食は市町村、中学と高校の給食は県または地方の管轄です。給食は義務ではなく、1日単位で食べるかどうかを決めることができます。午前の授業の後、帰宅して家で昼食をとり、午後の授業に間に合うよう再登校することもできますが、例えばパリ市では幼稚園・小学校で給食を食べる子供の割合は80%以上です。給食費は保護者の収入に応じてその額が変わり、パリ市では1食あたり約17円から910円まで10段階に分かれています。校内の給食室で調理する場合と給食センターから届けられる場合があるのは日本と同じですが、給食を食べるのは教室ではなく専用の食堂で、担任教師ではなく別の職員が食事の世話をします。自治体や学校によって多少の違いはありますが、たいてい幼稚園ではテーブルに着席した子供たちの元に給食調理員さんが配膳し、小学校以上は、自分でトレイを持って料理が盛り付けられたお皿を取る、いわゆる学食のようなスタイルです。

 パリ4区にある小学校の今年9月のある日の献立をご紹介しましょう。

 前菜:オーガニック野菜のグリーンサラダとアボカド
 メイン:牛肉のロースト
 付合せ:スムール(粒状パスタ)&さやいんげん
 乳製品:ポン・レヴェックチーズ
 デザート:オーガニックのりんご

 このように、給食の献立もフランスらしく、前菜・メインと付合せ・乳製品・デザートが基本で、パンも必ず添えられます。乳製品はチーズやヨーグルトが多く、牛乳はあまり登場しません。食材の品質にも注意が払われており、2022年1月からは使用食材の50%が持続可能な食品(うち20%はオーガニック)であることが義務付けられる予定です。豚肉がメインの日には宗教上の理由から食べられない生徒に配慮して代替メニューが用意されます。

 マスク着用や手洗いを始めとする学校内の感染対策は比較的徹底している印象ですが、給食での「黙食」の概念を耳にしたことがないのは、食事は楽しい時間であるべきと考えるフランスならではでしょうか。

◇初出=『ふらんす』2021年11月号

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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